家蚕幼虫中腸組織の2型のアルカリ性フォスファターゼFおよびS型について諸性質を比較検討し, 合わせて新しく現われるN型との関係について実験し, 下記の事実を知ることができた。
1. F型の最適pHは約10.1, S型のそれは11.3付近である。
2. F型の方が反応初速度が大であるが, 速く活性が落ち, S型は反応時間の経過に伴う活性の低下が少なかった。また基質濃度―活性曲線の形にも両型の間にかなりの差がみられた。
3. α-グルコース1リン酸に対してはF型がS型の2倍以上の活性を示し, β-グリセロリン酸の場合にも1.4倍の活性がある。一方生体外基質に対してはS型の分解作用が強かった。
4. 有機溶媒, 界面活性剤およびリパーゼ処理によってS型から新しい活性泳動帯 (N型) が生じた。このことからS型は脂質と結合してその役割を果しているものと推論した。
5. 電気泳動によって検出される消化液のアルカリ性フォスファターゼは中腸組織を界面活性剤で処理することによって現われるN型と易動度が一致していた。このことおよびS型の諸性質からNおよびS型は消化液の酵素と密接な関係があるものと想像した。
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