バイオフィードバック機器の研究開発技術者に課せられている責任のうちで,最も注意しなければならない法的責任が製造物責任である.製造物責任法(PL法:Product Liability Law)とは製品の欠陥によって生命,身体又は財産に損害を被ったことを証明した場合に,被害者は製造会社などに対して損害賠償を求めることができる法律で,円滑かつ適切な被害救済に役立つ法律である.具体的には製造業者等が,自ら製造,加工,輸入又は一定の表示をし,引き渡した製造物の欠陥により他人の生命,身体又は財産を侵害したとき(拡大損害が生じた時)は,(一般的な)過失の有無にかかわらず,これによって生じた損害を賠償する責任があることを定めている.また製造業者等の免責事由や期間の制限についても定めている.ただ欠陥による被害がその製造物自体の損害にとどまった場合であれば,この法律の対象にはならない.このような損害については,従来通りに現行民法に基づく瑕疵担保責任・債務不履行責任・不法行為責任等による救済が可能である.PL法では製造物を「製造又は加工された動産」と定義しており,一般的には大量生産・大量消費された工業製品の様に,人為的な操作や処理がなされた後に消費者に引き渡された動産を対象としている.そのため不動産,未加工農林畜水産物,電気,ソフトウェアといったものは該当しない.なおPL法はあくまで製品に「欠陥」が存在したことを許した「欠陥責任」を問うものであり,決して「無過失責任」を製造者等に課するものではない.その「欠陥」には,(1)設計上の欠陥,(2)製造上の欠陥,(3)指示・警告上の欠陥の三種類があり,当該製造物に関するいろいろな事情(判断要素)を総合的に考慮して,製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうため,安全性に関わらない単なる品質上の不具合等は,PL法上の欠陥には当たらない.なおPL法に基づいて損害賠償を受けるためには,被害者が,1)製造物に欠陥が存在していたこと,2)損害が発生したこと,3)損害が製造物の欠陥により生じたことの3つの事実を明らかにしなければならない.ただこれらの認定に当たっては,個々の事案の内容・証拠の提出状況等によって,経験則や「事実上の推定」などを柔軟に活用することにより,事案に則した公平な被害者の立証負担の軽減が図られている.その反面,製造業者等との公平を図るため,「開発危険の抗弁」「部品・原材料製造業者の抗弁」「損害賠償請求の時効」などが定められている.
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