症例は41歳,男性.5歳時より心雑音を指摘されていたが,精査は受けずにいた.リウマチ熱の既往はない.嘔吐,下痢に引き続き動悸,眼瞼浮腫,下腿浮腫を認め当科入院.心エコー検査の結果,僧帽弁基部の石灰化と両弁尖に僧蝟弁瘤を伴う僧帽弁狭窄症を認めた.経食道心エコー検査および三次元心エコー検査を施行したところ,すべての腱索が前外側乳頭筋に付着し後内側乳頭筋には腱索の付着を認めない先天性僧帽弁狭窄症(
パラシュート
僧帽弁)と判明した.連続波ドプラ法から求めた僧帽弁ロ面積は0.7cm2であり,重度僧帽弁狭窄症と考え僧帽弁置換術を施行した.
先天性僧帽弁狭窄症は先天性心疾患の0.2-0.4%に認められるまれな疾患であり,
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僧帽弁の自然経過による平均生存期間は9.9年と不良である.本例の
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僧帽弁の特徴は,41歳まで無症状に経過した成人例であること,僧帽弁基部に高度石灰化と両弁尖に僧帽弁瘤を認めたことがあげられる.本例が成人に至るまで無症状で経過した理由としては,合併心奇形のない単独の
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僧帽弁であったことや僧帽弁逆流を認めなかったことなどが考えられる.
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