1981年1月から1982年11月までの23ヵ月間に, 北海道北部および東部で実施した大動物用X線診療車による臨床的に一見健康な乳牛2, 037頭の集団検診成績のうち, 第二胃内異物の存在率とその性状について検索した.
第二胃内金属異物が2, 037頭中1, 705頭 (83.7%), 砂粒状物が全頭, 磁石が855頭 (42.0%) に認められた.
第二胃内に金属異物と砂粒状物が認められた922頭のうち, 金属異物が胃壁を穿孔していたのが1.6%, 胃粘膜皺襞に刺入していたのが46.2%, 胃内で遊離していたのが52.2%であった.
第二胃内に金属異物, 砂粒状物および磁石 (バーネットA (R)) が認められた746頭では, 金属異物の胃壁穿孔が1.3%, 胃粘膜皺襞刺入が4.7%, 磁着しない金属異物の胃内遊離が10.6%で, 残りの83.4%は金属異物が磁石にすべて磁着していた. しかし, 金属異物が磁石にすべて磁着していた622頭のうち50.6%は, 磁着金属異物が磁石より突出していた.
以上の成績から, 第二胃内金属異物に基づく牛の各種創傷性疾患の予防・治療には磁石の経口投与が有効であると思われるが, 磁石の効果を過信し, 容易にこれを投与することなく, 磁石の改良も含めて, 投与前にあらかじめ第二胃内異物の形状, 存在状態などを把握した上で, 適応例に対して確実にこれを第二胃内に入れる処置をすべきであることが強く示唆された.
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