"εν το παν"と,パルメニデスは主張したが,その弟子ゼノンは,師の論を擁護すべく,それを嘲笑する者を相手どつて,"ου πολλα εστι"と強く主張した.かういふ意味のことを,プラトンは"パルメニデス"篇の最初の部分で述べてゐる.ゼノンの活動・思想・ならびにゼノンその人の本質を表はすのに,この"ου πολλα εστι"のといふゼノンの論爭の否定形の結語を,パルメニデスの"εν το παν"といふ肯定形に對して用ひたことは,さすがにプラトンの〓眼である.しかしながら,なぜ,そしてどのやうにして,この語がかく多大の内容を收歛し,密度の高いものとなり,そしてプラトンの〓眼を意味するものとなりうるのか.これからの叙説も,實は,このプラトンの選んだ言葉の読明に外ならない.
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