多様な生物活性を有するリアノジン (1)などのリアノイド類は、複雑に縮環し、高度に酸素官能基化された共通炭素骨格を持つ。1はカルシウムチャネルの開閉制御活性、リアノドール(2)およびシンゼイラノール(4)は殺虫活性、シンナカソール(7)は免疫抑制活性を持つことが知られる。特異な構造と生物活性から、リアノイド類は多くの合成化学者の興味を惹きつけてきたが、類縁天然物の全合成例はDeslongchampsらによる2の全合成1)、 我々による1および2の全合成2)の3例に留まっている。我々は、リアノイド類の精密構造活性相関研究を志向した網羅的合成法の確立を目指し合成研究を行った。
【合成計画】
Scheme 1に合成計画を示す。リアノイド類の網羅的合成を視野に入れ、構造の主たる相違点であるC2, 3位の合成終盤での官能基導入を計画した。そこで、リアノイド骨格に内在する対称性を利用した二方向同時官能基変換と続く非対称化により合成できる11をリアノイド類合成の共通中間体に設定した2)。11から12へ誘導後、C2, 3位を官能基化すれば3-5を合成できると予想した。
Scheme 1. Divergent strategy for construction of ryanoids
【3-エピリアノドール(3)の全合成】
3-エピリアノドール合成のために、C3位ヒドロキシ基の立体選択的構築を検討した(Scheme 2)。我々はすでに、リアノドール(2)のα配向C3位ヒドロキシ基を、近接ヒドロキシ基を足がかりとしたC3位ケトンの立体選択的
ヒドリド還元
により構築している(14→15)。一方、C3位ケトンのβ面を覆う嵩高いアセトニド基を持つ13に対し
ヒドリド還元
を行えば、β配向のヒドロキシ基が構築されると期待した。しかしながら、13のC3位ケトンは、極めて反応性に乏しく還元反応は進行しなかった。C3位近傍の立体障害を減らすため、C2-イソプロペニル基を導入前に基質のC3位ケトンの還元を試みた。すなわち、11のC10位ヒドロキシ基をMOM保護した後、LiBH
4を作用させるとC3位ケトンの立体選択的還元が進行すると同時に、TMS基の転位が進行し、18を与えた。18のDess-Martin酸化により、C3位にβ配向の酸素官能基を持つケトン12を得た。
C2位の官能基化を経て3-エピリアノドール(3)の全合成を達成した。12に対し、アルケニルリチウムを作用させて立体選択的にイソプロペニル基を導入し、付加体19を得た。19のTMS基、アセトニド基とMOM基を、それぞれTAS-Fと酸処理により除去しヘキサオール20とした。最後に接触水素化により、ベンジル基の除去とイソプロペニル基の還元を行い3の合成を実現した。
Scheme 2. Stereocontrolled construction of C3-hydroxy group for total synthesis of 3-epi-ryanodol
【シンゼイラノール(4)の全合成】
続いて、シンゼイラノール(4)の合成を検討した(Scheme 3)。12に対し、ヨウ化サマリウムを作用させてC3位酸素官能基を還元的に除去しケトン21を得た。21に対して、イソプロペニル基およびイソプロピル基導入を試みたが、付加体を与えなかった。これは21のエノール化が優先したためと考えられる。種々検討の結果、塩化ランタン存在下3)、シクロプロピルリチウムを作用させると、C2位へ立体選択的にシクロプ
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