花南岩を基岩とする切取のり面の緑化植栽地における植栽樹木の成長を調査した。現在, のり面は造成, 植栽後3年を経ており, 今回の報告は植栽後ごく初期の成長に関するものである。調査対象のり面は, 周辺の樹林地と同等の樹林の復元を目指しており, 樹木植栽のためにのり方向に溝を切り, 客土を行うタテ筋客土工を行っている。植栽樹種は, クロマツ, アラカシ,
ヒメユズリハ
, ヤマモモ, コナラ, ヤマザクラ, ヒメヤシャブシ, ヤシャブシ, ヤマハンノキの9種である。成長はあきらかに落葉樹において優れており, クロマツがこれに次ぎ, 常緑広葉樹が遅れている。常緑広葉樹の成長の遅いことは, 各樹種の種特性からみて当然の結果であるが, これに加えて管理作業, 特に吹付草本類の下刈りの影響が, 非常に大きくきいている。特にヤマモモ,
ヒメユズリハ
においては, 草本とともに刈り取られる確率が高い。このことから, 目的とする樹林の主要構成種の保護育成のためには, 注意深い管理作業および吹付草本の種の選択に対する再考の必要性が示された。しかし, 概して, 岩盤地の樹木による緑化例としては, その経過は良好であるといえる。
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