イプロジオンを常用しているゴルフ場ベントグリーンで, 同剤のダラースポットに対する効果が著しく低下し, 激甚な被害を受けた。
そこで, ジカルボキシイミド系殺菌剤処理後に残存したパッチより
S. homoeocarpaを分離し, 本菌のベントグラスに対する病原性, 菌学的性質および各種殺菌剤に対する感受性を感受性菌と比較した。
(1) ジカルボキシイミド系殺菌剤処理後に分離した
S. homoeocarpaの同系3剤およびPCNBに対する感受性は, 感受性菌に比べEC
50値で300倍~1500倍以上低下していた。耐性の強さと発病の強さに一定の関係は認められなかった。
(2) ジカルボキシイミド系殺菌剤耐性菌はベンズイミダゾール系, トリアゾール系殺菌剤に対して強い感受性を示した。
(3) イプロジオンに対するMIC値は4.0~5.0, 200~500, 1000~1600ppmの3群に別れ, 耐性菌は感受性菌に比べ菌叢発育が遅い傾向にあった。
(4) ジカルボキシイミド系殺菌剤耐性菌はイプロジオン添加培地による培養で耐性の強さが維持されるのに対して, 薬剤無添加培地では耐性が低下する傾向にあった。
(5) ジカルボキシイミド系殺菌剤を1年間使用しなかったベントグリーンに発生したパッチからの分離菌株は, ジカルボキシイミド系, ベンズイミダゾール系およびトリアゾール系殺菌剤のいずれにも強い感受性を示した。
以上の結果より, 本病の防除および耐性菌の発生の抑制には3系統以上の殺菌剤の交互施用あるいは混合施用が有効であると結論される。
抄録全体を表示