【目的】4°C保存された
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ドライマウス精子から産子が得られたことから、
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ドライ法を液体窒素不要の新しい精子保存法とする研究が進められている。本研究は、
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ドライ保存法の開発に取り組む中で保存液の組成に注目し、保存液中のキレート剤が
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ドライ後の精子へ与える影響について検討を行った。【方法】保存液は、10mM Tris-HCl に0、1及び50mM EDTAを添加したものを用いた。精子は、B6D2F1マウスの精巣上体尾部より回収し各保存液中に懸濁後、Kanekoら(2003)の方法に従い
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ドライした。4°Cで保存した
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ドライ精子は、卵細胞質内精子注入法により同系統マウス卵子内に導入した。得られた受精卵の染色体解析および移植後の産子への発生について検討することで
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ドライ精子の受精能を評価した。さらに、長期保存試験として1年間4°Cで保存した
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ドライ精子の受精能およびC57BL/6Jマウス精子における
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ドライ後の受精能について検討した。【結果】10mM Tris-HCl+1mM EDTA保存液を用いた
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ドライ精子の73%が正常な染色体を保持しており、これら精子と受精した57%の胚が産子にまで発生した。一方、0及び50mM EDTAを添加した保存液を用いた
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ドライ精子は、正常染色体を持つ精子(64%及び22%)及び胚の産子への発生(16%及び3%)において1mM EDTA添加保存液を用いた時よりも低値を示した。さらに、4°Cで1年間保存した精子と受精した胚の65%が産子へ発生した。一方、C57BL/6Jマウス精子においては、受精した胚の25%が産子へ発生した。【結論】以上のことから、保存液中の一定量のキレート剤は精子を
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ドライのダメージから保護する作用があると考えられる。さらに、本研究で作製した保存液は
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ドライ精子を長期保存できるだけでなく、近交系マウス精子においても有効であることから更なる汎用性が期待される。
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