昨今の日本は,地震や洪水といった災害に見舞われ,当たり前であった安心できる環境や関係を失うという大きな対象喪失に見舞われている。また,臨床現場では多くのクライエントが生きる意味を問うている。本稿では,疾患を抱えた人だけでなく,多くの人々が感じる情緒に「むなしさ」があると考え,精神分析学や臨床心理学の臨床知や理論の変遷について調べた。そして,昨今の精神分析学においてアメリカで注目・実践されている関係精神分析や,河合隼雄の中空均衡型の考えを通して,現代における「むなしさ」に心理臨床家がどう関わっていけばいいのかを考察した。さらに,自らの経験を通して,詩がともにあることの大切さ,「むなしさ」を抱えながらも生きていくことについて考察した。
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