2010年に出版された画期的な著作において,Yigal Bronnerはサンスクリット文学におけるśleṣaの歴史を辿っている.しかしその著作においては,
プラーナ
文献における
śleṣaの可能性が全く考慮されていない.
プラーナ
文献の中でもバーガヴァタ・
プラーナ
はその神学的内容の深さと文学的価値の高さによって知られている.その作成年代は学者によって意見が異なるが,早ければ7世紀,遅ければ10世紀頃に推定される.この時期はBronnerによると詩人たちがより広く
śleṣaを活用していった時代にあたる.従って,時代的な流れという点では,バーガヴァタ・
プラーナ
において
śleṣaが使われていても決して不思議ではない.この論文では,バーガヴァタ・
プラーナ
10巻29章に焦点を当て,注釈書の説明に従いながらこの章において
śleṣaが使用されている可能性を探る.そして
プラーナ
文献において
śleṣaが使用されている可能性が,サンスクリット古典文学史において持つ意味について検討してみたい.
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