局所麻酔薬の化学的性状により, 効力は大きく変化する。局所麻酔薬の浸透圧とpHをともに検討した報告例はない。そこで, 麻酔効力の増強と局所刺激性の減少を目的として, 塩酸
プリロカイン
の浸透圧とpHの変化による影響を検討した。すなわち, モルモット歯肉および坐骨神経に対する塩酸
プリロカイン
の麻酔効力, NaHCO3の添加の影響, およびブタ角膜に対する局所刺激性を検討し, 次の結果を得た。1. 308mOSMは高低張浸透圧よりも, より強い局所麻酔効力を発現した。2. 308 mOSMの塩酸
プリロカイン
の効力では, pH7.4の深度はpH5.0の約1.6倍, 持続時間は約1.7倍を示した。3. 用時調整ではなく, 塩酸
プリロカイン
をあらかじめNaHCO
3でpH7.0と7.4に調整した場合, NaHCO3の添加の有無による効力の有意差はなかった。4. 歯肉と坐骨神経に対する麻酔効力はほぼ同傾向を示した。5. ブタ角膜に対する塩酸
プリロカイン
の刺激性はpHの増加に伴い減少し, さらに濃度依存性を示した。
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