詳細検索結果
以下の条件での結果を表示する: 検索条件を変更
クエリ検索: "ヘルレン川"
24件中 1-20の結果を表示しています
  • *辻村 真貴, 安部 豊, 田中 正, 嶋田 純, 樋口 覚, 上米良 秀行
    水文・水資源学会研究発表会要旨集
    2005年 18 巻 30
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/25
    会議録・要旨集 フリー
    乾燥・半乾燥地域における内陸河川は,流下にともない水面からの蒸発と地下水への涵養により,徐々に流量を減じていくことが一般に言われている.従来こうした河川と地下水の交流関係は,流下に伴う河川流量の変化という見かけの傾向から指摘されることが多く,実証的な検討はなされてこなかった.本研究では,モンゴル東部
    ヘルレン川
    の上流部から中流部に至る本流とその流域を対象に,安定同位体トレーサーを用いた水・同位体収支解析に基づき,河川水と地下水との交流関係を検討した.その結果,上流,中流いずれの区間でも河川_-_地下水交流量は正値を示し,河川に対する地下水の流出が生じていることが示唆された.上流区間において1.0 m3/s(1.7 x 10-2 m3/s/km),中流区間において2.6 m3/s(1.1 x 10-2 m3/s/km)の地下水流入量は,水面蒸発量を上回り,また河川流量の10 %から20 %に相当し,無視し得ない量である.
  • 上米良 秀行, 陸 旻皎
    水工学論文集
    2007年 51 巻 397-402
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/08/25
    ジャーナル フリー
    Water losses from channel have been observed in the middle and lower reaches of the Kherlen River flowing through eastern Mongolia. The objective of this study is to investigate the cause of these water losses. The Kherlen basin is divided into three subbasins: the upper, the middle, and the lower. The analysis of channel water balance is carried out each subbasin using meteorological and hydrological data and a simple water balance model. The analysis produces two main results. (1) The estimated net amount of surface-or ground-water inflow from surrounding areas into channel is plus. (2) The estimated amount of seepage through river bed to aquifer is in proportion to square root of observed river flow; this means that the actual is not zero. These two results support a hypothesis on surface-or ground-water interaction between channel and its surrounding areas. To be more precise, the runoff generated in surrounding areas is consumed by evaporation and seepage and does not contribute to changing river flow in the middle and lower of the Kherlen basin.
  • *福地 賢治, 南 優次, 加茂 義明
    工学教育研究講演会講演論文集
    2016年 2016 巻 2F25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/14
    会議録・要旨集 フリー
  • 辻村 真貴, 安部 豊
    地下水学会誌
    2005年 47 巻 1 号 129-135
    発行日: 2005/02/25
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
  • 阿子島 功, 本多 嘉明
    季刊地理学
    2002年 54 巻 2 号 111-116
    発行日: 2002/07/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
  • *佐藤 隆, 杉田 倫明, 山中 勤, 辻村 真貴
    水文・水資源学会研究発表会要旨集
    2009年 22 巻 P26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/25
    会議録・要旨集 フリー
  • 綱川 明芳, 山中 勤
    水文・水資源学会誌
    2005年 18 巻 3 号 306-309
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/27
    ジャーナル フリー
    低温凝結法によって大気中の水蒸気を採取する際,水の相変化に伴って生じる同位体分別によって,水蒸気の同位体組成が変化してしまう危険性がある. しかしながら,サンプリング時の同位体分別の有無や程度について,詳細な検討を行った例はこれまでほとんどなかった. そこで本研究では,同位体分別の有無を確認するための実験方法を考案し,サンプリング手法の信頼性の評価を試みた. 幾つかの条件下で実験を行った結果,通気流量をある程度(例えば,10 l/min)以下に抑えれば,実用十分な精度(δDで±1‰,δ18Oで±0.5‰)で水蒸気の安定同位体組成を測定できることが示された.
  • *浅沼 順
    水文・水資源学会研究発表会要旨集
    2006年 19 巻 11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    大口径シンチロメータを用いた広域顕熱フラックスの計測を報告する。2003年夏、モンゴル国
    ヘルレン川
    流域において行われた、RAISE(Raingelands Atmosphere-HydrosphereInteraction Study Experiment in NortheasternAsia)プロジェクト集中観測の一環として、大口径シンチロメータによる顕熱フラックス観測が行われた。平坦な草原上において、シンチロメータのパス長さを1100,1500,3000,4500mの4通りに変えて、計測を行った。渦相関法によって観測された顕熱フラックスとの比較では、パス長4500m以外はおおむね妥当な値が得られた。詳細な解析の結果、シンチロメータによるフラックス計測値は、そのフラックスソースエリア内の地表面被覆を反映したフラックス値であることが明らかになった。
  • 安部 豊
    水文・水資源学会誌
    2014年 27 巻 5 号 254
    発行日: 2014/09/05
    公開日: 2014/12/11
    ジャーナル フリー
  • 矢野 伸二郎, 辻村 真貴, 田瀬 則雄, 植田 宏昭
    水文・水資源学会誌
    2006年 19 巻 5 号 383-391
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/19
    ジャーナル フリー
    山地斜面における降水の安定同位体比時空間分布の形成過程を解明するため,茨城県筑波山の南側斜面4 地点において,2004年8月から12月にかけて降水を高い時間分解能で採取,分析した.解析した5つの降雨イベントにおいて,酸素安定同位体比高度効果は,-0.33~-0.10 ‰/100m(平均-0.18 ‰/100m)であった.筑波山における高度効果は,卓越風向にかかわらずみられることから,Rayleigh のモデルのみからその成因を説明することは難しいと考えられる.また観測された降水の安定同位体比から,凝結前の水蒸気のそれを推定したところ,同様に高度効果がみられた.このことから,雲内の水蒸気の安定同位体比において高度効果が生じている可能性が示唆される.降水の安定同位体高度効果は,降雨イベント開始時に顕著であり,降雨ピークに近づくに伴い効果が不明瞭になる傾向が認められ,降雨ピーク以後再び明瞭になるという時間変動を示した.この変動は,雨滴凝結時に生じる潜熱がもたらす雲内の上昇気流の強弱によって説明できると考えられる.降雨ピーク時に大量の雨滴が凝結することにより,卓越した上昇気流が雲内に生じ,鉛直方向の同位体傾度が低下することが,高度効果の時間変動要因になっていると考えられる.
  • 季刊地理学
    1993年 45 巻 2 号 142-146
    発行日: 1993/07/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
  • 古谷 尊彦
    日本地すべり学会誌
    2004年 40 巻 5 号 450-452
    発行日: 2004/01/25
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
  • 田中 幸哉
    学術の動向
    2010年 15 巻 2 号 2_28-2_35
    発行日: 2010/02/01
    公開日: 2010/11/05
    ジャーナル フリー
  • 韓 文軍, 侯 向陽, 志水 勝好, 児玉 香菜子
    熱帯農業研究
    2017年 10 巻 1 号 1-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/10/12
    ジャーナル フリー
  • 烏云娜, 岡本 勝男
    システム農学
    2006年 22 巻 1 号 59-69
    発行日: 2006/04/10
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    中央アジア東部の内陸地域に位置するモンゴル国(Mongolia)は、気候変動の影響を受ける可能性が高い地域であるが、実態は、あまり知られていない。筆者らは、2004年6月に、首都大学東京と筑波大学が調査地を設けている3ヶ所の典型草原を調査する機会を得た。この機会に、土壌断面調査、土壌表層試料の採取、植生調査、牧民への聞き取り調査を行った。それらの調査結果や収集した資料を、モンゴルの農牧業や生態系、植生変動研究に焦点を当てて紹介する。
  • *加藤 弘亮, 恩田 裕一, 田中 幸哉
    日本地理学会発表要旨集
    2009年 2009s 巻 611
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/22
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
    モンゴルの国土面積の約75%は寒冷な半乾燥草原であり,一年を通して放牧活動が行われている。モンゴルでは,1990年の市場経済化以降の放牧家畜頭数が急速に増加しており,草原への放牧活動の負荷が高まっている(Chullun and Ojima, 1994)。特にモンゴル北東部の
    ヘルレン川
    流域の丘陵地草原では,水食にともなう土壌流亡によって土地荒廃が進行していることが指摘されている(Onda et al., 2007)。しかし,モンゴルでは,草原における表面流の発生と土壌侵食の実態が明らかにされていないのが現状である。そこで本研究では,モンゴル半乾燥草原において振動ノズル式降雨実験装置を用いて浸透能・侵食実験を行い,地表の被覆状態の違いが最終浸透能と土砂流出量に及ぼす影響を明らかにした。

    2.研究地域と人工降雨実験の方法
    モンゴル北東部を流れる
    ヘルレン川
    流域に位置するヘルレンバヤンウラン(KBU)とバガヌール(BGN)では,これまでに対照的な放牧活動が行われてきた地域である。KBUでは,放牧家畜の越冬地として歴史的に過放牧が行われており,一方のBGNでは,1990年の市場経済化以降に放牧家畜頭数が増加している。それぞれの地域における雨季の地表植被率は,KBUが29%でBGNが61%である。放牧圧と地表植生が異なるこの二つの地域を調査地域とした。
    調査地域の植生の状態がほぼ均一な斜面に放牧区と禁牧区(50 m×25 m)を設定し,禁牧区を高さ1.5mのフェンスで囲って放牧家畜の影響を除去した。禁牧開始から4年経過した後に,それぞれの区画において人工降雨と小プロット(1 m×1 m)を用いて浸透能と土砂流出量を測定した。人工降雨の降雨強度は180 mm h-1で,この降雨強度のときの雨滴衝撃力は,調査地域の地表流発生における雨滴衝撃力のいき値(400 J m-2 min-1)よりも大きい。小プロットに人工降雨を30分間与え,表面流出量を1分間ごとに記録し,表面流出水を3分毎に採取した。浸透能は人工降雨の降雨強度と表面流の流出高の差分として算出した。また,表面流出水をろ過し,浮遊土砂量を測定した。さらに,小プロットの上,下端壁に雨滴侵食土砂を捕捉するためのボードを取り付け,30分間の人工降雨によって発生した雨滴侵食土砂量を測定した。

    3.結果
    KBUとBGNにおける禁牧区の植被率は46.7%と91.7%で,放牧区と比べてそれぞれ25 %と45%の増加に転じた。禁牧区で測定された最終浸透能は,KBUとBGNのいずれにおいても80 mm h-1よりも高かったが,放牧区では40 mm h-1よりも低い値を示した。地表流とともに流出した土砂量はKBUの放牧区で最大を示し(253.6 g),BGNの放牧区では108.7 gであった。これに対して,KBUとBGNにおける禁牧区の流出土砂量は少なく,それぞれ55.1 gと14.4 gであった。雨滴侵食量は,放牧区についてKBUとBGNでそれぞれ1.88 g m-1と5.35 g m-1で,禁牧区ではそれぞれ0.56 g m-1と0.18 g m-1であった。

    4.考察
    植被率が高い禁牧区では浸透能が高く,土砂流出量が少なかった。このことは禁牧によって回復した地表植生が裸地土壌表面を雨滴衝撃力から保護することによって浸透能を維持し,地表流の発生を抑制したことが原因であると考えられた。一方,植被率が低い放牧区では浸透能が低く,すなわち地表流が発生しやすく,雨滴侵食量が多かった。このことは,放牧区では雨滴衝撃による土壌剥離と地表流による運搬の相乗効果により土砂流出量が増大したことを示唆している。最終浸透能と雨滴侵食量は総地表被覆率と関係がよく,土砂流出量は植被率と関係が良かった。すなわち,前者は裸地面積と関連が強く,後者は地表流の分布などの水理特性と関連にしていると考えられる。インターリル侵食は雨滴衝撃による剥離,地表流の分布と土壌表面の特性の相互作用によるものである(Parsons et al., 1994)。KBUの放牧区では浸透能が比較的高く,BGNの放牧区よりも雨滴侵食量が少なかったにもかかわらず,土砂流出量は最も多かった。このことから,強い降雨強度を与えた人工降雨条件下では,過放牧が行われているKBUの土壌はBGNと比べて侵食されやすいことが示唆された。

    5.まとめ
    人工降雨実験の結果,研究地域では放牧活動によって浸透能が低下し,土壌侵食量が増加していることが示された。しかしながら,比較的短期間の禁牧によって植被率が回復し,土壌侵食量が減少することが分かった。このことは,研究地域の草原が放牧による土地荒廃プロセスから回復しうることを示していると考えられる。
  • 田村 憲司, 藤原 英司, 鳥山 和伸
    日本土壌肥料学雑誌
    2010年 81 巻 3 号 273-280
    発行日: 2010/06/05
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
  • *加藤 弘亮, 恩田 裕一, 田中 幸哉
    日本地理学会発表要旨集
    2007年 2007s 巻 623
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/29
    会議録・要旨集 フリー

    1.研究の背景
     モンゴル半乾燥草原において,過放牧によって土壌侵食が増加し,土地荒廃の進行が指摘されている。しかし,これらの地域では,土壌侵食についての観測データが限られており,草原の土壌侵食の実態は明らかになっていない。
     近年,欧米諸国を中心として,土壌中の放射性同位体の存在量から,過去の土壌侵食履歴を推定する手法が用いられている。最近では,従来のセシウム-137の代わりに,鉛-210を用いた研究が報告されている(Walling et al.,2003)。
     そこで本研究は,セシウム-137と鉛-210を用いて,モンゴル半乾燥草原の放牧の状況が異なる二つの地域の土壌侵食量を推定し,長期的な放牧圧の違いが土壌侵食履歴に及ぼす影響を明らかにした。

    2.研究地域と方法
     モンゴル国の北東部を流れる
    ヘルレン川
    流域の,放牧の状況が異なる二つの地域にそれぞれ試験流域を選定した。ひとつはヘルレンバヤンウラン(KBU;6.9 ha)で,冬季に積雪が少ないため,放牧家畜の越冬地として古くから放牧圧が高い地域である。もうひとつはバガノール(BGN;7.6 ha)で,ここ十数年に放牧家畜の頭数が増加している地域である。
     セシウム-137と鉛-210の空間分布を明らかにするために,それぞれの試験流域内の50地点において30cm深の土壌コアを採取した。また,調査地域における放射性核種の降下量を明らかにするために,リファレンスサイト(侵食も堆積も起きていない地点)において土壌コアを採取した。採取した土壌は,105ºCで24時間乾燥させた後,2 mmのふるいにかけた。ふるい通過分を測定用の容器に封入した後,Nタイプ・ゲルマニウムγ線検出器(EGC25-195-R,Canberra,France)を用いて12時間測定し,それぞれの核種の濃度を測定した。土壌侵食量は,移行拡散モデル(He and Walling,1997)を用いて,大気中からの降下量に対する放射性同位体存在量の増減率を土壌侵食量に変換した。

    3.結果と考察
     土壌中のセシウム-137の分析から推定した土壌侵食量は,放牧圧が高いKBUで多く,放牧圧が低いBGNでは少なかった。また,鉛-210の分析からも同様の結果が得られた。試験流域内で侵食された土砂のうち,試験流域外に流出する土砂の割合(土砂輸送率)は,セシウム-137の分析結果からBGNで82 %だったのに対し,KBUでは97 %だった。一方,鉛-210の分析から推定した土砂輸送率は,KBUではセシウム-137の結果と比べて高かったが,BGNでは低い値を示した。放射性同位体を用いた土壌侵食量の推定手法は,侵食土砂が速やかに流亡することを前提としており,Fukuyama et al.(Submitted)によれば,侵食速度が遅い斜面では,定常的に大気中から降下する鉛-210の影響を受けて土壌中の濃度が増加することが指摘されている。BGNでは斜面下方にいくにつれて鉛-210濃度が増加し,それは雨滴衝撃やシートフローによってゆっくりと土砂が運ばれるため(Onda et al., 2006),大気中からの新たな鉛-210が付加したことに起因すると考えられる。このことは,BGNにおいて,鉛-210から推定した土砂輸送率がセシウム-137よりも小さく見積もられた原因と考えられ,BGNのように侵食された土砂がゆっくりと移動するような環境では,鉛-210では土壌侵食量を正しく評価できないことが示された。

    <参考文献>
    Fukuyama et al.. Journal of Geophysical Research, submitted.  
    He, Q., & Walling, D.E. (1997). Applied Radiation and Isotopes, 48(5), 677-690. 
    Onda et al. (2006). Journal of Hydrology, in press. 
    Walling et al. (2003). Geomorphology, 52, 193-213.
  • 西川 知行, 恩田 裕一, 田中 幸哉, 加藤 弘亮, 辻村 真貴, 関 李紀, 浅野 眞希, Gombo DAVAA, Dambaravjaa DYUNBAATAR
    砂防学会誌
    2005年 58 巻 3 号 4-14
    発行日: 2005/09/15
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Desertification becomes significant problems in the grazing land in semi-arid Mongolia. The purpose of this study is to evaluate the present soil erosion processes using Cs-137. We investigated two small watersheds (BGN : underlain by granite, vegetation cover in rainy season is 70%, KBU : underlain by sedimentary rocks, vegetation cover in rainy season is 30%). In the undisturbed soils, most of the Cs-137 is concentrated uppermost layer and the depth distribution exhibits an exponential decline with depth. Using Cs-137, we estimated the depth, rates and processes of soil redistribution by comparing the reference value at the reference site. The soil erosion rate for the past 40 years using Profile-Distribution Model was estimated as net erosion rate in BGN watershed of 0.3 t/ha/y, and the sediment delivery ratio of 12%. In contrast, in KBU watershed, the net erosion rate is estimated as 3.8 t/ha/y, which is about 13 times as large as BGN watershed, and sediment delivery ratio is estimated as 78%. The significant differences for many phenomena in connection with soil erosion were found between watersheds with different vegetation cover.
  • モンゴル国現代牧畜社会における居住単位のサイズと構成の変遷
    辛嶋 博善
    文化人類学
    2016年 81 巻 1 号 044-061
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/10/16
    ジャーナル フリー

     柔軟性という概念はしばしば牧畜民の行動や組織に関する説明原理として用いられてきた。居住地 を変えうる移動性や土地と比して分割しやすい家畜群という財が、様々な条件に対応しうる選択の幅 を広げることから、柔軟性という概念は牧畜の理解の足掛かりとなってきた。しかし柔軟性にも限界 はある。少なくとも成員の生命の維持と再生産、放牧や生殖に関わる家畜の管理を全うする場である 居住単位について言えば、ある程度の規模が維持されなければならなかったはずである。本論文では モンゴル牧畜民の居住単位の約11年間の変化を提示し、その特徴を柔軟性の観点から考察する。

     本論文で対象とする1つの居住単位は、最終的に3つに分裂する。こうした居住単位の変化の要 因として、個人のライフサイクル、家畜管理上の要請、定住地への移住による人口減少を挙げるこ とができる。

     移住による人口減少が原因で、居住単位はこれまでの家族を前提とした世帯ではなく、定住地に 妻子を置いて単身で留まった男性の牧民か、家畜を託された男性の牧夫による小規模な世帯を中心 に構成されるようになる。その後、牧夫らが結婚して新たに世帯を築くものの、1世帯による小規 模な居住単位が継続されることになる。

     こうした居住単位では、その内部で従来通りの協業をすることが不可能となるが、牧民たちがト ラック、携帯電話、カセットコンロや市販の加工食品、屠畜場などを利用しつつ、定住地との、あ るいは居住単位間の広域的な協業によって家畜管理を行っている。

    こうした小規模な居住単位による宿営が可能となったこと、そして世帯が散住したにもかかわら ず協業が可能となったことは、柔軟性の拡張と呼べるものである。

feedback
Top