本研究の目的は,19世紀~20世紀初頭の米国のハイスクール「自然哲学」及び「物理」教科書における「蒸気機関」教材の変遷を明らかにすることである.本研究では,両科目の教科書計17冊を対象に,蒸気機関に関する記述と図・写真を分析した.その結果,両科目の教科書において,蒸気機関の効率が重視されるようになる傾向と,蒸気機関の内部構造が提示されなくなる傾向の2つが見られた.これらの傾向と「物理」の成立過程に関する先行研究(荒谷・丹沢, 2019)を勘案すると,「物理」の成立過程において「蒸気機関」教材は,科目の目的に準拠しながら,蒸気機関の実用的な側面が重視して取り扱われるようになっていたことが指摘できた.
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