困難への挑戦心は,前向きな学習や精神健康を向上させるとともに,不確実な未来を生きる上で重要な資質である。しかしながら,わが国の子どもは先進諸国と比べて困難への挑戦心が低く,挑戦心の育成に焦点を当てた心理教育も開発されていない。そこで,本研究では
ポジティブ心理学
の24の人格的強み(Peterson & Seligman, 2004)に依拠し,強みの活用を促す介入の効果を検証することを目的とした。高校生15人に対し,
ポジティブ心理学
と人格的強みの講義を行った上で,強みの理解を促す小グループ活動(カルタ取り,強みの自己評価,強みシールによる強みの見える化,強み活用法の検討)を実施した。活動の前後で,強みの理解,効力感,将来の希望などを7件法で測定した。その結果,活動後には活動前よりも,自己の強みの理解(事前4.67 vs. 事後5.87,d=0.93),強み活用の効力感(事前4.27 vs. 事後5.67,
d=0.95),困難対処の効力感(事前3.67 vs. 事後5.00,
d=1.03),将来の希望(事前5.07 vs. 事後6.00,
d=0.63)が向上した(
ps<.01)。効果量から,強みの介入は困難への挑戦心を育む上で特に効果的である可能性が示唆された。最後に,強みの心理教育の有効性が議論された。
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