子宮頸部癌や子宮頸部前癌病変とヒトパピローマウイルス (HPV) 感染の疫学的検討をDotblot hybridization法 (Vira Pap, Vira Type kitなど) を用いて行い以下の結果を得た.
1) 各種子宮頸部病変におけるHPVゲノムの陽性率は, mild dysplasia 22.2%(22/99), moderatedysplasia 62.9%(22/35), severe dysplasia 42.9%(6/14), carcinoma in situ (CIS) 59.2%(45/76), invasive squamous cell carcinoma 77.4%(24/31), invasive adenocarcinoma45.5%(5/11), 細胞診陰性婦人1.4%(3/218) であった.
2) Vira PapやVira TypeでHPVゲノム陰性であった症例に対して, HPV52b型をDotblot hybridization法で検討したところ, 陽性率は13.9%(10/72) であった.
3) HPVのタイプ別では, 従来癌化と関係があるといわれてきたHPV16, 18型以外に31, 33, 35型が高率に認められた.
4) 膣病変におけるHPVゲノム陽性率は62.5%(5/8) であった.
以上の結果から子宮頸部病変とHPV感染との間に何らかの因果関係が想定される.しかも従来のHPV16型, 18型のみならず, 31/33/35型, そして52b型や58型といったサブタイプの関与も示唆された.今後は各HPVタイプ感染病変の自然史研究が望まれる.
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