口径60cmの受光望遠鏡,出力150mJ,パルス幅200ps,発射繰返し4ppsのレーザーを持つ人工衛星レーザー測距装置を下里水路観測所に設置して,1982年3月以来ラジオス,スターレット,ビーコンCの3衛星の測距観測を実施している.1984年1月末までの測距回数は,ラジオス201パス,42,828回,スターレット161パス,35,757回,ビーコンC287パス,111,364回となり,1回の測距当りの平均精度は,10cm程度である.現在,測距回数と測距精度の向上を目的として各種の測定と改良作業を行っている.当観測所と各国の測距局において得られた測距データを用いて地心座標系に基づく下里水路観測所の位置を,開発した軌道解析プログラムにより算出した.テキサス大学において地球回転パラメーターの推定に,基準座標系として用いられているLPM81.12座標系に準処して,レーザー測距装置の高度および方位軸の交点の位置について予備的に求めた値は,北緯33゜34′39″.683,東経135゜56′13″;.156,基準楕円体(長半径6378137.0m,扁平率1/298.257)高100.90mである.日本測地系による地上測量の結果との比較から,日本測地系からLPM81.12座標系への測地座標系変換量は,ΔU=-142.8m,ΔV=+510.7m,ΔW=+681.0Mと求まる.LPM81.12座標系について,
マクドナルド天文台
の2.7mの月レーザー測距用の望遠鏡の基準点を介して,月レーザー測距の結果から求まっている経度差+0″.197を加えると,上記測地座標系変換量は,ΔU=-146.3m,ΔV=+507.1m,ΔW=+681.0mとなり,日本測地系は,BIH座標系にかなり近い地心天文座標系に結合されることになる.
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