モモノゴマダラノメイガの2系,果実系幼虫と
マツ科
系幼虫の寄主特異性の比較のために,両系幼虫の寄主植物の有機溶媒抽出物および含有糖類に対する摂食反応を,試料添加のロ紙を幼虫に摂食させる簡易検定法で調べた。
1) 両系幼虫ともにそれぞれの寄主植物(スギ葉を除く)の80% MeOH抽出物に対して強い摂食反応を示したが,他の有機溶媒抽出物にはほとんど反応を示さなかった。
2) 果実系幼虫は
マツ科
系の寄主植物であるゴヨウマツの80% MeOH抽出物により摂食を阻害されたが,ヒマラヤスギ,ウラジロモミの同抽出物にはほとんど反応しなかった。
3)
マツ科
系幼虫は果実系幼虫の寄主植物のモモ,クリ,リンゴ果実の80% MeOH抽出物にはいずれも強い摂食反応を示した。
4) 果実系の寄主植物のクリにはシュークロースが多量に含まれ,モモ,リンゴあるいはスギ葉にはフラクトース,グルコースが多いがシュークロースは少ない。一方,
マツ科
系の寄主植物にはいずれもフラクトースが多く,シュークロースはきわめて少ない。
5) 果実系幼虫はシュークロースに最も強く反応し,ついでフラクトース,グルコースの順に反応した。また幼虫はソルビトール,イノシトールに弱いながら摂食反応を示したが,マルトースとラクトースでは摂食を阻害された。
6)
マツ科
系幼虫はフラクトースに最も強く反応し,ついでシュークロース,グルコースに反応した。しかし他の供試糖類に対してはほとんど反応を示さなかった。
7) 両系幼虫の糖選好性と寄主植物中の糖含有量はほぼ対応していた。
8) 以上の結果から,果実系と
マツ科
系は幼虫の寄主特異性の基礎と考えられる糖類に対する摂食反応が異なり,これら2系は分類学上異なる位置にある集団であると結論される。
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