本研究は,道路橋における実測データを用いた将来状態予測によって維持管理戦略の立案等を支援するアセットマネジメント手法の実現性について実証的検討を行ったものである.2004(平成16)年から同じ要領によって全国の直轄道路橋で蓄積されてきた近接目視に基づく定期点検データに対し,社会資本への適用性検討例のある複数の既存劣化予測手法を適用した.その結果,推計手法の相違によって将来の予測結果には維持管理戦略に影響を及ぼす差が生じる可能性があることがわかった.また,諸元や部材位置,使用条件等によって劣化の特徴は大きく異なる.これに対し,劣化予測における信頼性確保の観点から,点検ではこれらの条件をできるだけ一致させることができるように細分化された単位でデータを取得し,蓄積していくことが有効であることを示した.さらに着目する劣化事象について,ばらつきに関する情報を含む劣化の特徴を簡便に評価できる実務的な手法を提案した.
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