本研究では、資産価格リターンの予想を行うResidual Network (ResNet)を、マクロ経済の理論モデル(DSGE)との
マルチタスク
学習により正則化する方法を提案する。経済理論が対象とする概念の一部は、現実の資産価格の決定メカニズムにも共有されている。したがって、
マルチタスク
学習によって共有因子を鮮明化することは汎化性能を改善する可能性がある。そこで、多数の経済金融時系列を入力とし、リターンを予測するResNet の損失関数に対して、経済理論への整合性が制約となるようなペナルティを課す(正則化項の加算)、という
マルチタスク
学習を行った。実際、複数のハイパーパラメターで検証した結果、
マルチタスク
化によって、テストデータへの汎化性能が改善する傾向が確認された。すなわち、多数の経済金融時系列を教師データとして受け取ったAI は、リターン予想に資する特徴の抽出を、経済理論とある程度整合的な仕方で行い、それが過学習の予防となって汎化性能が向上した可能性がある。また、Layerwise Relevance Propagation を応用することで、
マルチタスク
共有中間層のうち、任意の経済ファクター(DSGE によって識別)と関連の深いユニットを特定し、それらが同時に資産リターンに与えた影響を抽出することで、AI 内部で形成されている経済ファクターと資産価格リターンの相関構造を記述することが可能となり、解釈性を高めることにもなる。
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