アルカリ・
マンガン乾電池
の二次電池化の試みに伴う問題点を摘出するため, その充放電時の陽極二酸化マンガン粒子の状態変化をX線回折とX線マイクロアナリシスとを併用して観察し, つぎのことを明らかにした。
(1) 二酸化マンガンの放電を軽度にとどめてもカリウム・イオンが粒子内に侵入していることが認められ, 放電が進行するにつれて亜鉛イオンも外部から粒子内部へ滲透してくる。
(2) このカリウムと亜鉛は, 充電によっても粒子外へ駆逐されることなく粒子内に留まることが認められる。
(3) 放電の最終的な生成物はヒドロヘテロライトであり, これに至る途中の生成物として四三酸化マンガンと, Potassium Permanganite がある。後者は主として間欠重放電の場合に部分的に生ずる。
(4) 四三酸化マンガンを充電すると Potassium Permanganite に移行し, もとの二酸化マンガンの状態にまでさかのぼって回復しない。この Potassium Permanganite は, 放電すると直ちにヒドロヘテロライトになる。それら各段階でのミクロ的状態は明らかに異なる。
(5) このように, 放電の浅い深いにかかわらず二酸化マンガン粒子中にいったん侵入したカリウムと亜鉛は, これをいわゆる充電によって粒子から引き離すことは困難であり, ミクロ的に斯る不可逆的な変化が生じていることが従来アルカリ・
マンガン乾電池
の二次電池化の試みを困難ならしめてきた重要な原因のひとつであるように思われる。
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