マントル
の大規模な地震波速度の不均質、長波長のジオイド、プレート沈み込み、の三者の間に密接な関係があることが注目され、
マントル深部の地震波速度異常は主にマントル
の熱対流あるいは温度異常を示していると考えられてきた。しかし最近になって、
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最深部およそ1000kmに関する限り、大規模な不均質構造には温度異常のみでなく化学組成の異常も大きく関与している可能性が高いと考えらるようになった。つまり深部
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の構造にはそこでの熱組成対流の様相が深く関わるため、この対流プロセスを明らかにする必要が改めて認識されるようになってきた。これまで多くの、現実地球に近い状況を再現する熱組成対流モデル計算が行われているが、大規模な化学組成異常構造を長期間
マントル
深部に維持しておくメカニズムについては未だ明らかになったとは言い難い。これまでに提示されている最も自然なメカニズムは、地球表層から沈み込んだ海洋地殻岩石の
マントル
深部への集積であろう。近年の高温高圧実験技術の進歩により海洋地殻成分(玄武岩)の下部
マントル
深部における密度が明らかになりつつあり、CMB付近で地殻成分は周囲の標準的
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よりも2%程度は重いようである。このように重い地殻の
マントル
深部での振舞いを明らかにすることが問題解明の鍵となる。そのためにはかんらん岩や玄武岩など
マントルの代表的岩石のマントル
深部におけるレオロジーを実験と理論により確定し、それに基づいて計算機による対流シミュレーションにおけるレオロジーの取り扱いをより現実的にしていく努力が必須である。さらにそれと並行して何よりも、
マントル
深部の対流様式に関する地震学的観測に基づく新しい制約がますます重要となるに違いない。本講演では
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深部の化学組成不均質構造に関わる地震学観測と解析についてレビューする。特に、最近
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深部の10kmスケールの散乱体の観測により得られつつある、海洋地殻の
マントル
深部における振舞いに関する新たな情報について紹介する。
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