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4,604件中 1-20の結果を表示しています
  • 清真、ハラール、ムスリム・フレンドリー
    砂井 紫里
    文化人類学
    2019年 83 巻 4 号 593-612
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/12
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、台湾を対象に、

    ムスリム
    が少数派を構成する社会において
    ムスリムと非ムスリム
    を取り込み展開するハラール認証制度と、制度を活用する事業者と消費者の動向を考察することである。他の非イスラーム地域と同様に、台湾でもハラール認証制度は、非
    ムスリム
    のハラール産業への参入を促進しており、その点で制度は
    ムスリムと非ムスリム
    を架橋する。他方で台湾の中国回教協会のレストラン認証では、事業主が
    ムスリムか非ムスリムかに応じてそれぞれムスリム
    ・レストラン/
    ムスリム
    ・フレンドリー・レストランと認証カテゴリーを分けている。このカテゴリーの分化は、
    ムスリムと非ムスリム
    の違いを可視化している。本稿ではまず、ハラール認証制度が自己と他者を連接し差異化するという両面性を有していることを指摘し、新たに創造された商品・料理やサービスが
    ムスリムと非ムスリム
    を架橋しつつ弁別していることを明らかにする。従来、中国語圏の
    ムスリム
    である回民は、ハラールを含意する語として清真(qingzhen)を用いてきた。人びとの生活の中の清真は、
    ムスリムにとって非ムスリム
    と自己とを弁別するアイデンティティの根幹となってきた。だが、近年のハラール産業に関わる場面では、清真はもっぱら「イスラーム法における合法」を意味するアラビア語のハラールの訳語として限定的に用いられるなど、清真とハラールの意味は、重なりながらもずれがある。他方で台湾の現代ハラール産業では、広く人と人との取引や相互行為において重視されてきた「誠信(誠実と信頼)」の精神や、食の選択肢の一つとしての「素食(ベジタリアン食)」、そうした食の対応にみられる「弾性(弾力性)」といった地域独自の価値観や食文化との接合もみられる。本稿では、台湾のハラール認証が、自己と他者を弁別しながらも、台湾独自の価値観を包摂しつつ、非
    ムスリム
    事業者、
    ムスリム
    団体、政府関係機関を巻き込み展開する動向を明らかにする。

  • ― 長期滞日ムスリムの信仰実践の障壁と困難を基にした検討 ―
    松永 繁
    敬心・研究ジャーナル
    2023年 7 巻 2 号 53-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】我が国ではニューカマーと呼ばれる長期滞日外国人の高齢化に伴い高齢者介護施設を利用する者も出てくることが考えられ、その中には

    ムスリム
    も含まれる。そこで、本研究では、長期滞日外国人
    ムスリム
    高齢者の施設入居に伴い生じる信仰実践の障壁と困難について明らかにすることを目的に実施した。【方法】長期滞日外国人
    ムスリム
    の信仰実践の困難に関する文献レビューを行った。【結果・考察】自身のライフイベントにおいて、対処方法の選択肢が限られる環境が長期滞日外国人
    ムスリム
    の信仰実践の障壁である。この障壁のために自身が望む信仰実践における課題解決の対処方法が取れず、良き
    ムスリム
    として人生を歩めないという困難を抱える。【結論】長期滞日外国人
    ムスリム
    高齢者が施設入居した場合、個人の生活スタイルや希望が制限されてしまう要素を持つ施設の特性から、長期滞日外国人
    ムスリム
    同様の障壁・困難を抱えることが考えられる。

  • *高橋 健太郎
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018s 巻 814
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/27
    会議録・要旨集 フリー
    中国では、1980年代以降、商工業の発展にともなって、沿海部、特に華東、華南地方の都市へ多くの人々が移動している。同様に、西北、西南地方などから沿海部の都市へ回族やウイグル族などの
    ムスリム
    少数民族も移動している。また、2000年頃より多くの外国人
    ムスリム
    が沿海部の都市に滞在するようになった。そのため、これらの都市では、ハラールのレストランや食料品店の増加などで地域に変化が生じている。さらに、モスクや
    ムスリム
    用の墓地が不足しているなどの問題も表面化している。
     このような先行研究を踏まえて、筆者は2017年8月に広東省深圳(Shenzhen)市において聞き取りや資料収集を行ない、各
    ムスリム
    関連施設の経緯や現状、課題について調査した。本発表ではその成果の一部を報告する。

     地域調査や資料で把握することができた限りでは、深圳市の
    ムスリム
    関連施設としては、モスク(清真寺)が八つ、ハラールの給食を提供する幼稚園が一つ、
    ムスリム
    用墓地が一つ、およびハラールのレストランや食料品店が多数ある。
     1979年に市制が施行され、1980年に経済特区が設けられて工業が急速に発展する以前は、深圳市にはほとんど
    ムスリム
    はいなかった。深圳市でもっとも早い1984年に開設された
    ムスリム
    関連施設は、
    ムスリム
    賓館というホテルである。これは、甘粛省臨夏回族自治州政府が開設したもので、当該政府の深圳駐在事務所も併設されている。また、礼拝のための部屋も備え、それはのちにモスクとして利用されるようになった。香港との境界に近い羅湖区文錦に立地し、開設当初は市内で唯一のハラール・レストランを備えたホテルであったため、深圳市を訪れた中国内外の
    ムスリム
    が定宿とした。
     流動人口が多く正確に把握することが難しいが、調査時現在、深圳市の
    ムスリム
    の人口は10~12万人といわれ、そのうち本市の戸籍を持つ人は1.3万人である。深圳市の
    ムスリム
    人口が増えるにつれて、より大きなモスクが必要となり、市政府との交渉の末1998年に福田区梅林に簡素なモスクが建てられた。2000-2010年代を通して梅林モスクの規模拡大が検討され、2016年、地下1階、地上5階建ての大規模なモスクに改築された。
     2000年代前半より深圳市にハラールの牛肉ラーメン屋が増え、その多くは西北地方などから来た
    ムスリム
    が経営している。このような外来
    ムスリム
    の増加にともない、モスクも増加するが、多くはビルの一部を利用した簡素な造りである。
     文錦モスクと梅林モスクの周辺には、ハラールのレストランや食料品店が数軒あり、
    ムスリム
    が集まるモスクが周辺地域の経済活動や景観に影響を与えていることが確認された。ただし、モスク周辺への
    ムスリム
    の集中的な居住は確認できず、市内各地に分散して居住している。
     H幼稚園は、ハラールの給食が提供されることと初歩的なイスラーム文化を学習できることが特徴である。しかし、園内は宗教的な雰囲気は薄く、漢族などの園児も受け入れており、マイノリティである
    ムスリム
    の立場が反映されている。なお、深圳市内ではハラールの食堂を備えた小中学校は確認できなかった。原則的に土葬で、葬送儀礼も非
    ムスリム
    と異なることから、
    ムスリム
    は死後、専用墓地に埋葬される。深圳市の
    ムスリム
    用墓地は1999年に開設され、深圳市に戸籍がある
    ムスリム
    のみが使用できる。約300区画のうち半数はすでに使用されており、今後用地が緊迫することが予想される。

     1980~1990年代に深圳市に移り住んだ中国人
    ムスリム
    のなかには地方政府の職員や会社員などホワイトカラー層が多く、市政府と交渉してモスク建設を実現した。深圳市が国際都市としての性格を強めるなかで、「世界三大宗教の一つ」であるイスラームを市政府も重視するようになり、モスク建設を支援した。2000年代以降、レストランなどで働くために深圳市に移り住む中国人
    ムスリム
    が増え、
    ムスリムと非ムスリムまたはムスリム
    間の摩擦が増えた。加えて、欧米で
    ムスリム
    を危険視する潮流の影響も受け、
    ムスリム
    関連施設の管理が強化されている。さらに近年、深圳市において国内外の
    ムスリム
    の定住化が進んでいることから、モスクや墓地、
    ムスリム
    に配慮した教育施設などへの需要が高まっている。
  • 東京都豊島区「マスジド大塚」を事例として
    *川添 航
    日本地理学会発表要旨集
    2017年 2017s 巻 536
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,日本の
    ムスリム
    社会に注目し,
    ムスリム
    の居住地や日常生活とマスジドの活動との相互作用,および
    ムスリム
    社会の拡大に伴うマスジドの変容を明らかにすることである.東京都にあるマスジド大塚を研究対象として参与観察を行い,その過程において
    ムスリム
    29人に日常生活についての対面聞き取り調査を行った.また,マスジドの活動や沿革については,運営団体である日本イスラーム文化センター(Japan Islamic Trust : JIT)理事会役員に聞き取り調査を行った.欧米と同様,日本に流入した外国人
    ムスリム
    もホスト側国家の入国管理に影響を受ける不安定な存在である.異文化環境において,
    ムスリム
    は社会関係の維持やアイデンティティ保障等の社会的・精神的な存在意義を持つ施設としてマスジドを整備してきた.マスジド大塚は都心部に位置するためアクセシビリティは高い一方で,郊外に居住する
    ムスリム
    は平日通勤等のため頻回にマスジドを訪れることが困難であるなど,
    ムスリム
    の日常生活においては労働の比重が大きい.また,本来宗教的に望ましいと考えられる礼拝方式と比べて,就業環境から制約を受けることもある.日常生活におけるこれらの制約との対比が,マスジドでの活動や礼拝の重要性を高めていると考えられる.マスジド大塚の活動は
    ムスリム
    の社会経済的発展を反映し,最近20年程で整備・拡充されてきた.単身者や子供を持つ家庭など,様々な背景を持つ
    ムスリム
    が一箇所に集まる施設であるというマスジドの特性を反映している.
    ムスリム
    の居住地は,近隣地域に居住する「近隣地域居住型」,北部郊外に居住する「単純労働・単身居住型」,南部郊外に居住する「専門職・親族居住型」,遠隔地に居住する「行事参加型」に区分される.マスジド大塚は異なる社会経済的状況により生じる
    ムスリム
    の要求に応じて多様な活動を展開しているため,広範な地域から
    ムスリム
    が訪れている.マスジドは
    ムスリム
    が信仰と主体的に関わるための施設である一方,
    ムスリム
    と個々のマスジドとは機能的な関係で結びついているといえる.
  • 中野 祥子, 田中 共子, 奥西 有理
    異文化間教育
    2017年 46 巻 140-151
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2022/02/02
    ジャーナル フリー

    In this research, five Muslim international students took part in a follow-up interview after an initial interview two years prior (Nakano et al., 2015). These interviews explored changes over time in relation to cross-cultural difficulties. The results showed these students have continued to face difficulties in the past two years in their social life and interpersonal relationships with Japanese individuals. However, the details they provided regarding these difficulties changed across the two interviews. This research revealed that the frequency with which they confronted difficulties and the degree to which they were affected by these difficulties changed. The issues in their social life had been reduced as they adapted to inconveniences and acquired coping skills. However, in terms of interpersonal difficulties, some informants reported new kinds of difficulties as they gained more experience interacting with Japanese people.

    It was revealed that their difficulties consisted of three elements related to: themselves, the people around them, and society more generally. In other words, it was found that the amount of support from people around them and the obstacles they faced, as well as the coping strategies towards cultural differences they developed, affected the degree of their issues. Thus, controlling the negative points and emphasizing the positive points of relation to these three main elements would reduce these students’ difficulties.

  • 松本 ますみ
    日本中東学会年報
    2005年 21 巻 1 号 147-171
    発行日: 2005/09/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    中国
    ムスリム
    に対するキリスト教宣教は、19-20世紀半ば、福音主義宣教会の中では大きな課題となった。中国の
    ムスリム
    人口は当時3000万人とも言われ、インドについで第2位といわれた。植民地主義の時代、他地域の
    ムスリム
    の大多数が西欧の支配下、すなわち、「キリスト教徒の支配者」の下にあったが、「異教徒」の政権下の中国
    ムスリム
    は、福音から最も遠いという点において「問題」であると考えられた。植民地主義がピークに達した1910年のエジンバラ世界宣教会議以降、中国
    ムスリム
    に対する宣教も本格化、さまざまなパンフレット、宣伝文書、ポスターの作成が行なわれた。それに対し、
    ムスリム
    側も、論駁書、啓蒙書の発行、学校設立などイスラーム復興に着手して対抗を図った。ただ、両者の対立が深刻化しなかったのは、多文化多宗教の共存を旨とする中国
    ムスリム
    側の伝統による所が大きい。また、宣教師にもイスラームに深い共感を示した者が存在したことも大きい。
  • 中国雲南省昆明市の事例から
    奈良 雅史
    日本文化人類学会研究大会発表要旨集
    2012年 2012 巻 F12
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/28
    会議録・要旨集 フリー
    本発表の目的は、中国雲南省昆明市における回族を事例とし、1978年の改革開放政策の導入による宗教復興のなか、彼らにとっての「
    ムスリム
    であること」の基準がいかに変化してきたのかについて考察することである。事例分析から、「敬虔な」
    ムスリム
    が信仰の度合いの異なる回族や非
    ムスリム
    との出会いの中で、「
    ムスリム
    であること」を実践により獲得される属性とするようになってきたことを明らかにする。
  • 桂 悠介
    宗教と社会
    2021年 27 巻 65-80
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    本稿では、日本人

    ムスリム
    の改宗までの諸経験に着目することで改宗プロセスの分類を行う。先行研究においては、日本人の改宗の大半は
    ムスリム
    との結婚が契機であるとされ、結婚以外の経験は十分に着目されてこなかった。本研究ではまず、欧米の先行研究から「便宜的改宗者」と「確信(意識)的改宗者」、及び「関係的改宗」と「理性的改宗」という分析視点を提示する。これらの視点を基に、インタビューデータや入信記にあらわれる諸経験を検討する。そこで、日本においても、グローバルな人や情報の移動の中で生じる
    ムスリム
    との交流や海外渡航等が契機となる関係的改宗や、読書、勉強会、議論などが重要となる理性的改宗が時に重なり合いながら現れていることを指摘する。一つの要因に還元できない多様な経験に着目する本稿は、従来の日本人の自己像と他者としての
    ムスリム
    像の双方を問い直し、今日のイスラームをめぐる共生の課題解決に向けたひとつの視座を提供するものである。

  • ハラール認証制度が日本の非ムスリムや在住ムスリムに与える影響
    *阿良田 麻里子
    日本文化人類学会研究大会発表要旨集
    2019年 2019 巻 E02
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/01
    会議録・要旨集 オープンアクセス
    日本のハラール・ビジネスにおいては、マレーシア等の影響によりハラール認証が強調され、実践の多様性が無視されてきた結果、日本人の間に誤解が生まれ、給食などさまざまな場面で善意の行動が
    ムスリム
    の実践を阻害する状況が起こっている。ハラールをめぐる「オーソドクシー」が、一部の
    ムスリムを介して偏った形で非ムスリム
    に伝えられた結果、国内在住
    ムスリム
    の「オーソプラクシー」に影響を与えている状況を考える。
  • *李 小妹
    日本地理学会発表要旨集
    2016年 2016s 巻 910
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/04/08
    会議録・要旨集 フリー
    広州の
    ムスリム
    社会は、多国籍・多民族的な特質を見せている。中国各地域からの回族や新疆
    ムスリム
    や中東・アフリカ・西アジア・東南アジア諸地域からの外国
    ムスリム
    など、国籍やエスニック集団、社会的・政治的・経済的諸方面において多種多様な背景を持った人々が、イスラム文化のもとで、かなりの程度まで融合した
    ムスリム
    社会を形成している。四つのモスクに関して、使い分けがあるが、宗派の違いによるものではなく、住居や仕事場からの距離や交通の便利さなどで利用するモスクを選択したり、変えたりしている。四つのモスクは、
    ムスリム
    社会にとって、情報交換の場であり、宗教的文化的アイデンティティを確保してくれる場でもある。さらに、ビジネスのチャンスや学習する機会を与えてくれる場にもなっている。21世紀における広州
    ムスリム
    社会の多様化をもたらした要因について、グローバルな視点とナショナル・スケールにおける政治経済的政策との両方を視野に入れて考察する必要がある。9・11テロ事件や近年の中東局勢などイスラム教徒を取巻く生活環境の悪化や、中国とアフリカ諸国との貿易関係の強化などグローバルな要因に加え、WTO加盟や広州交易会の規模拡大など国内の政治的経済的要素が中東やアフリカや西アジア諸国からの
    ムスリム
    入国者の増加をもたらした。また、2001年からの西部大開発や西北部の貧困などによって、回族など多くの国内
    ムスリム
    が職を求めて広州にやってきた。さらに、外国
    ムスリム
    男性と結婚して改宗した漢族女性およびその次世代の子ども達からなる「新
    ムスリム
    〈新穆(シンム)〉」は出現している。
  • *高橋 健太郎
    日本地理学会発表要旨集
    2018年 2018a 巻 S304
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.改革開放と広東省
     中国では、1978年の中国共産党第11期3中全会から、改革開放政策により経済システム改革と対外開放が促進された。広東省はその影響を強く受けた地域の一つである。1980~1981年には、省内の深圳市、珠海市、スワトウ市に経済特区が設置され、外資誘致や技術移転が進められた。1985年には、珠江デルタが沿海経済開放区となり、製造業が活性化した。その後1980~1990年代にかけて、広州や深圳などに経済技術開発区やハイテク産業開発区、保税区が設置され、商工業がさらに活発になり、産業が高度化している。また、広州市では毎年2回、中国最大の輸出入商品の展示会「中国輸出入商品交易会」が開催されている。
     1980年代以降、商工業の発展にともなって、内陸部から広東省へ多くの人々が移動している。このような人口移動については、農民工、つまり都市に出稼ぎに来て工業や建設業などに従事する農村出身者に関する研究が多い。加えて、ホワイトカラーの移動についても研究が進められている。本発表では、広東省に暮らす
    ムスリム
    (イスラム教徒)に着目し、その特徴や変容から、中国の改革開放によって生じた人口移動や地域変容の一端を考察する。なお、本研究は、2015年8月に広州市、2017年8月に深圳市で行なった地域調査にもとづくものである。
    2.広東省の
    ムスリム

     広東省の
    ムスリム
    は中国籍と外国籍に大別でき、中国籍
    ムスリム
    には、親やそれ以前の世代から省内で暮らす本省出身者、および主に1980年代以降に移り住んで来た他地域出身者がいる。中国では戸籍にも登録される民族[minzu]をみると、本省出身の
    ムスリム
    は大部分が回族で、他地域出身の
    ムスリム
    には、「イスラームを信仰する少数民族」とされる10の民族がすべているが、回族やウイグル族が多い。また、少数ではあるが、本省出身者と他地域出身者の両方に漢族
    ムスリム
    もいる。外国人
    ムスリム
    の出身国は、中東のシリアやイラン、南アジアのインドやハ゜キスタン、バングラデシュ、アフリカのマリやコンゴ、ギニア、ガーナ、ケニアなどである。なお、それぞれの人口は、広州市の例では、本市出身者は約5千人、他地域出身者は約5万人、漢族
    ムスリム
    は数百人、外国人
    ムスリム
    は約10万人と推計されるが、他地域出身者と外国人は流動性が高い。
     他地域出身の中国人
    ムスリム
    は1980年代に増えはじめ、行商人や、ハラール・レストランを新しく開いた人が多かった。2000年代以降にさらに増加し、ハラールのレストランや食料品店を開いたり、外国人
    ムスリム
    の会社で通訳や事務員として働いたり、自身で貿易関係の会社を開く人もいる。この時期の他地域出身
    ムスリム
    の増加の背景には、中国内陸の山間部で環境保全のために耕作が禁止され外部地域への移住が進められた政策がある。
     漢族
    ムスリム
    は、以前にも回族などの
    ムスリム
    との婚姻に際してイスラームに改宗した人はいたが、改革開放期には、中国においてイスラームが世界宗教であることが認識されたり、比較的自由に宗教を信仰できるようになったこと、さらに外国人の経営する会社で働くなど
    ムスリム
    と接する機会も増えたことから、婚姻以外の理由で改宗する漢族も増えている。
     外国人
    ムスリム
    は1990年代後半以降に増加した。その理由は、1997年の東南アジア金融危機により、それまで東南アジアで働いていた外国人が中国に移ってきたこと、および2001年の中国のWTO加盟を契機として、輸出商品を目当てにより多くの外国人商人が広東省に集まるようになったことである。外国人
    ムスリム
    は、衣服や雑貨、電気製品、IT機器などを中国で購入したり製造して、外国に販売する業務に携わっている人が多い。また、増加した外国人
    ムスリム
    向けに、ハラールのレストランや食料品店を経営したり、商品運送などの仕事をする外国人もいる。
    3.
    ムスリム
    の増加・多様化と地域への影響
     ここまで見てきたように、広東省における
    ムスリム
    の増加・多様化は、改革開放期の対外開放や商工業の活性化、比較的自由に国内を移動できるようになったことなどと深い関係がある。
    ムスリム
    の増加にともない、広州市や深圳市ではモスクが新しく建設されたり、多数のハラールのレストランや食料品店、ヴェールなどを売る
    ムスリム
    向け衣料品店ができ、地域の景観や雰囲気に変化をもたらしている。
     中国籍や外国籍の
    ムスリム
    の滞在長期化や定住化が進むなかで、すでにモスクや
    ムスリム
    用墓地、子女のためにハラールの食事を提供する学校の不足などが表面化している。また、中国の人件費が上昇し、産業構造の転換が図られるなかで、今後は広東省の
    ムスリム
    の人口や就業形態に変化が生じることも考えられる。
  • 石田 友梨
    情報知識学会誌
    2022年 32 巻 4 号 420-423
    発行日: 2022/12/18
    公開日: 2023/01/27
    ジャーナル フリー

     近年日本では観光業を中心にハラール認証の取得や礼拝室の設置が進み,イスラーム教に対する理解が求められるようになった.一方,政策としてデータサイエンス教育の推進が掲げられている.そこで,両者を組み合わせた「イスラーム×デジタル」教材を開発することにした.具体的には,クルアーンの「陸」と「海」に該当する言葉に注目したテキストマイニングや,預言者ムハンマドの言行録ハディースのText Encoding Initiative (TEI) に従ったマークアップなどの教材がある.課題としては,教材を利用する機会が少ないことから教育効果の評価ができていないこと,教材として用いることが適切であるかイスラーム教徒への調査が必要であることが挙げられる.

  • 樋口 美作
    共生科学
    2015年 6 巻 6 号 121-125
    発行日: 2015年
    公開日: 2019/06/17
    ジャーナル オープンアクセス
    Islam set Ibrahim to founder of“pure monotheism”, and was opened by the prophet Muhammad of the last following the prophets Musa(Moses)and Isa(Jesus)dispatched by God Allah. A Muslim(Islam believer)respects Musa(Moses)and Isa(Jesus)as an apostle of God, and believes as a sacred book to which the Old Testament and the New Testament as well as Quran(Koran)were revealed from Allah. There was no claim that Islam was“a new religion”from the beginning. Therefore, Quran(Koran)is relevant in contents with two previous sacred books, and has similarity and difference. In order for three religions to exist simultaneously in the world, it does not argue about a doctrine, but difference is recognized mutually rather, and it is requested that a dialog should be deepened from the viewpoint of a mutual understanding.
  • ─配慮不足と過剰防衛との間でバランスをとること─
    阿良田 麻里子
    日本調理科学会誌
    2018年 51 巻 2 号 129-132
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー
  • Nor Zafir Md Salleh and Roshazlizawati Md Nor
    国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要
    2015年 1 巻 63-85
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2018/04/27
    ジャーナル オープンアクセス
    イスラム観光の概念は、観光産業の中でニッチ市場として発展をとげつつある。
    ムスリム
    観光客が訪れる観光地では、ハラル食品、旅行商品、宿泊サービスなど、彼らの需要を満たすような幾つかのサービスが提供されている。さらに、日本、韓国、台湾のような非
    ムスリム
    観光客の目的地においても、多くの
    ムスリム
    観光客を誘致すべく、彼らに対応した施設やサービスが作られ始めているのが現状である。本稿では、秋田県のような非
    ムスリム
    観光客の訪問地において、
    ムスリム
    に対応した各種施設を提供する試みについて論ずる。言葉の壁、行き先の旅行会社と出発地の間に関係性がないこと、
    ムスリム
    観光客が求めるサービスについての情報が不足していること等の幾つかの問題が、秋田県を
    ムスリム
    観光客を対象とした観光地へと成長させる上での主な障壁になると考えられる。
  • フィリピンのマニラ首都圏における土地紛争の事例より
    渡邉 暁子
    日本文化人類学会研究大会発表要旨集
    2008年 2008 巻 J-29
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    本報告は、フィリピンの首都マニラの
    ムスリム
    ・コミュニティにおいて発生した土地権をめぐる紛争を扱う。裁判闘争とそれを支援する街頭デモにおいて「モロ/
    ムスリム
    性」という概念がいかに使い分けられ、表象されたかを考察することによって、圧倒的マイノリティの状況であるマニラで自らの社会生活の基盤を構築しようとする
    ムスリム
    の多様な戦略の一例を提供することである。
  • *東明 有美, 野川 春夫, 工藤 康宏, 上代 圭子, 秋吉 遼子
    日本体育学会大会予稿集
    2017年 68 巻
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     2012ロンドンオリンピックでは、サウジアラビアから初の女性選手が参加しこと(ロイター、2012年7月29日)や、開催期間が

    ムスリム
    が断食をおこなうラマダンの期間と重なったことで、イスラム教徒(
    ムスリム
    )選手への注目が集まった(読売新聞、2012年8月2日)。

     日本で開催される2020オリンピック・パラリンピックにおいても多くの

    ムスリム
    選手の参加が予想される中、現在日本では異文化理解のための教育プログラムが実施されているが、イスラム文化に対する理解は乏しいのが現状であり、
    ムスリム
    とスポーツに関する情報についても極めて限定的である(斉藤,2014)。

     欧米では、特に

    ムスリム
    女性を対象として、
    ムスリム
    とスポーツ参加に関する研究が行われている(Sfeir,、1985;Kay、2006;Jiwani、2011)。

     したがって本研究では、イスラムとスポーツに関する情報収集を行い今後の基礎資料とすることを目的とし、諸外国におけるイスラムとスポーツの関係に関する研究動向を検討する。

  • *杉江 あい
    日本地理学会発表要旨集
    2021年 2021s 巻 201
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/29
    会議録・要旨集 フリー

    平成29・30年改訂の高等学校学習指導要領解説には,次のような記述がある.

    「例えば,

    ムスリム
    においては宗教と生活の関わりが一般に密接で,日々の生活の中に多くの宗教的な実践が組み込まれているが,その教えの基本的な部分において他の宗教と倫理的,道徳的な面での共通点も見られる.自他の文化を理解するに当たり,表面的な相違点を強調することは,その理解の妨げともなるので,その取扱いには十分配慮することが大切である」(文部科学省2018:55)

    この記述は,平成21年改訂の学習指導要領解説から引き継がれている(文部科学省2009).本発表で詳しく述べるように,

    ムスリム
    は宗教と生活の関わりが一般的に密接という点には首肯できないが,表面的な相違点の強調が自他の文化の理解の妨げになるという主張に賛成する.しかし,地理の教科書(平成27〜29年検定)を見ると,イスラームや
    ムスリム
    については食の禁忌や5行(信仰告白,礼拝,断食,喜捨,巡礼),女性のヒジャーブといった表面的な特徴の記述に終始するのが現状である.これは,第1に,地理の教科書が当該地域の専門家以外によっても執筆されること,第2に,片倉もとこ氏や内藤正典氏の仕事を除いて,日本の人文地理学界には教科書執筆者が参照するであろうイスラームや
    ムスリム
    に関する知の蓄積がほとんどないことに起因すると考えられる.

     その一方で,近年は地理教育の分野においてイスラームや

    ムスリム
    をいかに教えるべきかという議論が活発になされるようになった(中本2009;永田2012;荒井・小林編2020).その背景としては,日本に定住または短期滞在する
    ムスリム
    の増加,
    ムスリムのテロリストの言動によるムスリム
    一般への偏見の高まりなどが挙げられる.しかし,先行研究が掲げるイスラームや
    ムスリム
    に対する「ステレオタイプからの脱却」を目指すには,なお議論が不十分な状態である.本発表では,バングラデシュを主なフィールドとする日本人ムスリマの立場から,イスラームや
    ムスリム
    について教える上で,次の2点を提案する.

    (1)イスラームと

    ムスリム
    を切り離して捉えること.具体的には,イスラームを
    ムスリム
    の言動から解釈しないこと,また
    ムスリム
    の生活文化をイスラームに還元しないこと.

    (2)イスラームの5行など,表面的なことのみではなく,信仰や論理などの内面的なことを生徒に理解可能な形で提示すること.

     (1)については,誤解されやすいクルアーンの和訳文を例にして,イスラームについて理解するにはアラビア語やイスラーム学に関する深い知識が必要なことを示す.また,

    ムスリム
    の生活文化が様々な価値観や慣習から成るハイブリッドなものであることを,バングラデシュの事例をもとに検討する.(2)については,現世における礼拝や斎戒(断食)のメリットや,女性のヒジャーブの例から,イスラームが表面的な行いよりも内面の信仰を重視しており,日本人も共感できる論理を持っていることを議論する.

  • 阿良田 麻里子
    日本調理科学会誌
    2020年 53 巻 6 号 415-422
    発行日: 2020/12/05
    公開日: 2020/12/11
    ジャーナル フリー
  • 関係の形成・維持の工夫と葛藤に関する事例的研究
    中野 祥子, 田中 共子
    多文化関係学
    2017年 14 巻 59-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、日本人と
    ムスリム
    留学生との関係形成を、日本人側の視点から実証的に探索した。具体的には、
    ムスリム
    留学生と親しい関わりを持つ、日本人6名に半構造化面接を行い、交流時の葛藤や戸惑い、関係形成・維持のための工夫を尋ねた。その結果、交流時の葛藤及び戸惑いは、4つにまとめられた「: 宗教的な実践への戸惑い」、「宗教的価値観を用いた応答への戸惑い」、「宗教的な議論への戸惑い」、「宗教的な禁忌への不安」。また、関係形成・維持のための工夫は、5つにまとめられた「: 宗教的実践への配慮」、「宗教的実践への不干渉」、「共通点への注目」、「率直な自己表現」、「積極的な働きかけ」。本研究の日本人ホストは、文化差への戸惑いを抱きつつも、「適度な距離感」を保ちながら場の共有が可能になるよう努めて、交流を楽しんでいた。良好な関係形成・維持を可能にする鍵となる、双方にとっての「適度な距離感」は、最低限でさりげない配慮、過度に干渉しない姿勢、宗教的価値観を受け入れたうえで率直な意見を述べようとする態度のバランスによって創出されるものと考えられた。
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