演奏者たちの音楽の反応は"あらわな行動"が要求される。一方,聴取者たちの音楽の反応は"あらわでない行動"となる。原理的に考えて,音楽の刺激と反応によって知覚されたものは,人間の精神的な所産となる。従って,美的教育を目指す音楽教育においては,音楽に対する精神的・内面的な反応である"あらわでない行動"の方が,外面的な反応である"あらわな行動"よりも木質的なものであるといえる。しかしながら,学校音楽教育においては,この面が最も無視されていると思われる。ともかく,音楽学習における学習者たちの"あらわでない反応"を推量し,かつそれを発展させるためのいくつかのストラテジーを見いださねばならない。本論は,以上のような見地から,"あらわでない反応"の意味判断のために試みた,一つの実験的な研究の結果を述べたものである。
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