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クエリ検索: "モレーン"
791件中 1-20の結果を表示しています
  • *小松 哲也, 渡辺 悌二, 平川 一臣
    日本地理学会発表要旨集
    2007年 2007s 巻 610
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/29
    会議録・要旨集 フリー

     2006年9月27日‐10月26日に,発表者達は,中央アジアのタジキスタン・キルギスタンにおいて以下の調査:(1)気象観測ステーションの設置,(2)国立公園管理に関する聞き取り調査,(3)氷河・周氷河・段丘地形に関する予察調査,を行った.これらの中から今回は,タジキスタン側で行った(3)氷河・周氷河・段丘地形に関する予察調査,の結果を報告する.

    調査地域
     タジキスタン共和国はアフガニスタン・ウズベキスタン・キルギスタン・中国に囲まれた中央アジアの国で,国土の東半分がパミール高原とトランス・アライ山脈からなる山ぐにである.パミール高原は東部と西部で,降水量や地形的特徴が異なる.一般的に,東パミールは年間降水量100~200 mm以下,年平均気温-6~1℃(UNEP 2002),丸みをおびた山が目立つ高原状の地形からなる.一方,西パミールは年間降水量400~1500 mm,年平均気温-2~7℃(UNEP 2002),急峻な山脈とそれに並行する谷が南北に並ぶ.
     今回の報告は,次の二地域:(1)東西パミールの境界部に位置するChukur谷周辺,(2)東パミール北東部に位置するKara Kul湖周辺,における調査報告である.

    Chukur谷周辺の氷河地形
     Chukur谷(N37°30′,E72°45′)は東西パミールの境界部に位置する南向きの谷であり,本流であるToguzbulok谷の右岸側に位置する.一方,Toguzbulok谷の左岸側には,北向きの谷が並んで分布し,その前面には氷河底堆積物からなる平坦面が広く分布する.これは,北向きの氷食谷から前進してきた氷河が癒着して山麓氷河を形成し,Toguzbulok谷全体を覆う規模の氷河が発達したことを示す.
     Chukur谷における氷河地形の調査から,次の三つの氷河拡大期をあらわす
    モレーン
    (古い方からH, M, Lと仮称)を確認し,そのそれぞれのリッジに分布する花崗岩質の巨礫から10Be露出年代法用試料を採取した.これらの
    モレーン
    の地形的特徴は次の通りである.
     (1) H
    モレーン
    (標高4280 m):Chukur谷の中で最も高位に位置するラテラル
    モレーン
    状の地形で,谷の出口にのみ分布する.Toguzbulok谷全体を覆う規模の氷河が発達した時に形成された
    モレーン
    だと推定される.
     (2) M
    モレーン
    (標高4145-4160 m):H
    モレーン
    の下位に位置する
    モレーン
    で,Chukur谷中のトラフエッジの高さと調和的である.この
    モレーン
    は,谷の出口から1.5kmほど下流に位置するターミナル
    モレーン
    と地形的に連続する.また,このターミナル
    モレーン
    は,氷河底堆積物からなる平坦面を切って形成されている.
     (3) L
    モレーン
    (標高4200 m付近):M
    モレーン
    と連続するトラフエッジよりも下位に位置する
    モレーン
    .Chukur谷中にターミナル
    モレーン
    を形成している.
     これらH・M・L
    モレーン
    の年代について,その表面礫の風化度合いや先行研究(Abramouski et al. 2006)を参考にすると,H
    モレーン
    がMIS 5以前の氷期,M
    モレーン
    がMIS 4, L
    モレーン
    がMIS 2の氷河前進期に対比されると考えられる.

    Kara Kul湖周辺の氷河地形・湖岸段丘
     東パミール北東部には標高3950-4000 mほどの広大な盆地が存在する.そこには現在,塩湖であるKara Kul湖(380㎢;Ni et al. 2004)が存在している.このKara Kul湖は流出河川が一つもない閉塞湖であることから,その高湖水面期を示す湖岸段丘は気候変化に対応して形成される.Korienvsky(1936)によると,Kara Kul湖はヴュルム氷期に最も拡大(830㎢)したとされる.しかし,第四紀の湖面の昇降時期や面積変化と,氷河の前進・後退との関係は断片的にしか明らかになっていない.そこで,今回,Kara Kul湖周辺の氷河・湖岸段丘地形の観察を行った.
     Kara Kul湖南西部に位置するAkjilga谷(N38°55′,E73°12′)の出口には,ハンモッキー
    モレーン状のターミナルモレーン
    (標高3950 m)が分布する.このターミナル
    モレーン
    前面にはアウトウオッシュ・プレーンがほとんど発達していなかったことから,この
    モレーン
    形成期には,氷河と湖が接していたものと考えられる.また,Akjilga谷中において,このターミナル
    モレーン
    と地形的に連続するラテラル
    モレーン
    の100 m上位に,より古い時期のラテラル
    モレーン
    が分布することを確認した.
    モレーン
    上の礫の風化度合いや地形的特徴を考えると,ハンモッキー
    モレーン状のターミナルモレーン
    がChukur谷M
    モレーン
    ,その上位に位置するラテラル
    モレーン
    がChukur谷H
    モレーン
    に対比されると考えられる.
     また,Kara Kul湖南西部の丘陵の中腹に10,20,45 mの比高をもつ三段の湖岸段丘を確認した.しかし,現時点では,こうした汀線変化が生じた時期や,そのそれぞれの高さの湖岸段丘と関係する氷河地形については不明である.今後,現地調査を詳しく行い,これらの点を明らかにしていく予定である.
  • 1983-2003年の変化から考える
    *岩田 修二, 黒田 真二郎, カダル=ケズル 該当せず
    日本地理学会発表要旨集
    2004年 2004s 巻
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/29
    会議録・要旨集 フリー
    目 的:天山山脈の北面,ウルムチ川源頭No. 6氷河の末端部と小氷期
    モレーン
    の測量をおこない最近20年間の氷河末端とアイスコア
    モレーン
    の地形変化を地図化し,
    モレーン
    の形成プロセスを明らかにした.
    調 査:2003年7月-8月の1週間,氷河末端近くにキャンプして氷河末端と周辺の
    モレーン
    地形を測量・調査した.測量は光波測距儀と平板測量によって1:1000地形図を作成した.1983年6-8月の岩田・陳による詳細な測量の20年後の再測量である.本研究は中国科学院新彊生態地理研究所との共同研究である.
    No. 6氷河と
    モレーン
    :No. 6氷河は小規模な寒冷氷河で,北側の氷舌は岩屑被覆のない谷氷河で,南側は部分的に岩屑被覆がある円錐型氷河である.その末端にある,小氷期に形成されたと考えられている
    モレーン
    には,1983年には厚い透明氷が表面岩屑の下にあった.
    モレーン
    の前面は岩石氷河の形態によく似ている.
    結果(20年間の変化):測量結果を図1に示す. 1_北側の氷舌の前面位置は100m以上後退した.南側の氷河は前面位置がはっきりしないが同程度後退しているように見える.2_
    モレーン
    の前面の位置は変化していない.図1のコンターの差から,3_ 氷河表面低下量は北側の氷舌が30-40 m,南側の氷舌では15-20 m.4_
    モレーン
    表面の20年間の低下量は最大20 m,最小は0 mであった.5_ 氷河前面からの流路が伸長し,その末端の凹陥地は大きく深くなった.1983年に透明氷が観察できた凹陥地は一部は崩壊して浅くなり一部は深くなった. 6_
    モレーン
    の北東側の低下量が 0-1mの部分でも沈下によると考えられる割れ目や微地形がみられた.7_
    モレーン
    の表面構成礫は南東側を除くと細粒である.細粒表面礫の起源は融水による運搬堆積とbasal tillである.
    考察と結論的所見:1)No.6氷河の前面にある
    モレーン
    は,全体がアイス=コア=
    モレーン
    である.しかし,2)
    モレーン
    は岩石氷河ではない.3) No. 6氷河前面での
    モレーン
    の形成(堆積)プロセスは: 1. dumping: clasts and silty clay, 2.lodgment: clasts and silty clay, 3.basal meltout, 4.fluvial sedimentation (outwash), 5.アイス=コアの融解による変形と再堆積,6. debris flow, 7.alluvial cone sedimentation on moraine slopesが挙げられる.4) このような多様なプロセスから
    モレーン
    の多くの部分がティル的以外のファシスとなる.
     
    モレーン
    の堆積層相の形成には,
    モレーン
    形成中や形成後のfluvial processesや, gravitational processes (debris flowなど) , 氷河融解による沈下や傾動による変形 が重要である.この
    モレーン
    がアイス=コア=
    モレーン
    あるいは岩石被覆氷河になった理由は,現在の氷舌が前進したときもたらした岩屑によっている.
  • 木曽山脈北部,千畳敷カール・濃ヶ池カールの事例
    青木 賢人
    第四紀研究
    2000年 39 巻 3 号 189-198
    発行日: 2000/06/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    木曽山脈北部の千畳敷カールおよび濃ヶ池カールのカール底に分布するターミナル
    モレーン
    上に露出する複数の巨礫に対し,宇宙線生成核種の一つである10Beを用いた露出年代測定法を適用し,
    モレーン
    構成礫の生産年代を測定した.AMSによる10Be測定から得られた露出年代値の多くが17~19kaを示し,両
    モレーン
    は最終氷期極相期に形成されたことが示された.また,両
    モレーン
    は構成礫の風化皮膜の厚さが等しく,
    モレーン
    構成礫の風化皮膜の厚さを用いた相対年代法(WRT年代法)による年代推定結果と矛盾がないことが確認された.
  • 土井 英史, 岡伊 津穂, 片山 恒樹
    医科器械学
    1994年 64 巻 4 号 210-
    発行日: 1994/04/01
    公開日: 2021/06/04
    ジャーナル フリー
  • *水野 一晴
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 504
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    1.チャルキニ峰の氷河縮小と植生遷移
    ボリビアアンデス、コルディレラ・リアルのチャルキニ峰(5740m)の西カールにおいて分布する
    モレーン
    とその植生分布を調査した。チャルキニ峰西カールは、Rabatel (2008)により、
    モレーン
    が1-10に区分されている。それらの
    モレーン
    のうち、Rabetel(2008)で年代が示されている
    モレーン
    1:1663±23、
    モレーン
    6:1791±18、
    モレーン
    9:1873±25と、Rabatel(2008)に出てこない、さらに新しい
    モレーン
    11、
    モレーン
    13の計5カ所に10mx10mのプロットを設け、そのなかの2mx2mの方形区ごとに、植生分布と地表面構成物質の礫経分布を調査した。また、氷河末端付近の植生分布も調査した。
    モレーン
    11の年代は、Rabatel(2008)の
    モレーン
    10の年代、1907±19より10-20年くらい新しいもの、
    モレーン
    13は、1980年代くらいと推定される。
    モレーン
    の年代が新しくなるにつれて、分布する堆積物の礫経も大きく、植物の出現種数や植被率が低下していった。現在の氷河末端は高度4990mであり、氷河末端付近における出現種はPerezia sp.(Perezia multiflora ?)、Deyeuxia chrysantha、Senecio rufescensの3種のみで、それらが大きな岩塊わきに点在し、植被率はきわめて低い。
    2.チャカルタヤ山の地質と植物分布
     ボリビアアンデス、コルディレラ・リアルのチャカルタヤ山(5199m)の氷河は2009年に消滅した。水野(1999)やMizuno(2002)により、1993年の調査時の植物分布の上限の高さは、堆積岩の珪質頁岩の地域で4950m、火成岩の石英斑岩地域で5050m、変成岩のホルンフェルスの地域はその中間であった。また、高度4950mでの植被率は、珪質頁岩地域が0%、ホルンフェルス地域が10%、石英班岩地域が20%であった。これは、珪質頁岩の平均節理密度(1mの針金の輪を岩盤にあてたときの節理と交差する回数を20回測ったときの平均値)が13.3、ホルンフェルスが5.0-8.3、石英班岩が3.0-3.3であり、その節理密度にしたがって、生産される堆積物の大きさが異なった。細かい堆積物の多い珪質頁岩地域は地表の移動量が大きいため、植被率が小さく、植物分布の上限が低いが、堆積物の大きい石英班岩地域では地表の移動量が小さいため、植被率や生育上限高度が高くなっていた。どの地域も上限の分布植物はイネ科のDeyeuxia nitidulaであった。 この3つの地質地域で2012年においても同様な調査を行った。チャカルタヤ山の石英班岩地域の植物分布の上限は5058mで生育植物はキク科キオン属のSenecio rufescensであった。ケニア山においても、氷河消失後最初に生育できるのはセネシオ(Senecio keniopytum)であって、同種はケニア山の植物分布の最上限種でもあった。2012年のホルンフェルス地域の植物分布の上限は5033mで、珪質頁岩地域の植物分布の上限は5022mであり、その上限の植物種はともにSenecio rufescensであった。2012年の植物分布の上限高度が1993年に比べ、石英班岩地域で8m、珪質頁岩地域で72m上昇していた。
  • *澤柿 教伸, 青木 賢人, 安仁屋 政武, 谷川 朋範
    日本地理学会発表要旨集
    2004年 2004s 巻
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/07/29
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
     南米パタゴニア氷原は総面積17,200km2を占め,南半球では南極氷床に次ぐ面積の氷原である.氷原からは多くの溢流氷河が流出しており,これまでの研究結果から,それらのほとんどが後退傾向にあることが明らかにされており.パタゴニア氷原全体でみた場合,1944年以降の後退に伴う氷の融解量は,海面変動の3.6%に寄与しているという見積もりもある.2003年12月に,パタゴニア北氷原(4,200 km2)にあるエクスプロラドーレス氷河において,地形・氷河学的な現地調査を行ったので報告する.

    エクスプロラドーレス氷河
     エクスプロラドーレス氷河は,パタゴニア北氷原北東端上に突出しているSan Valentin山(3910m)を源流域とし,北北東に向かってエクスプロラドーレス谷へと溢流する氷河である.溢流部の全長はおよそ30km,末端部の高度は約230mで幅は約3kmである.

     氷河の末端(標高230m付近)には,樹木等の植生に覆われた比高約70から100mのターミナル
    モレーン
    がある.そこから上流2kmにわたって氷河は巨礫を含むデブリに覆われており,ハンモッキーな表面形態をなしている.ターミナル
    モレーン
    の内側,およびそのすぐ上流側にある数列のリッジには氷体が存在し,アイスコアード・
    モレーン
    である事が確認できた.

     ターミナル
    モレーン
    のすぐ内側には,融解水がせき止められてできた池がいくつか存在する.
    モレーン
    の内側にも樹木が侵入しているが,凹地に生えた樹木が浸水している箇所があり,このことから,かつて
    モレーン
    の内側へと樹木が侵入した安定期があって,その後,ほぼ現在において急速に氷体の融解が進行していることが伺える.

    年代試料
     
    モレーン
    の礫間を埋めるシルト粘度質のマトリックス部を掘削し,葉片を採取する事ができた.パタゴニア氷原から溢流する他の氷河では,完新世には,3600 yr PB (I), 2200 yr BP (II), 1600-900 yr BP (III), および小氷期 (IV)の前進期があったことが確認されており,今回採取した年代試料によって
    モレーン
    の形成年代を特定できるものと期待できる.今回行った現地での観察結果では,植生の進入状態や土壌の発達程度,およびアイスコアの保存状態などから判断して,小氷期以前に形成された可能性が高いと考えられるが,最終的な結果については今後の炭素放射年代の測定結果を待って,あらためて報告する.なお,もし,これが小氷期よりも一つ前の前進期(III)に相当するとすれば,小氷期の
    モレーン
    は顕著なリッジとして存在しないことになり,他の氷河にはみられない特徴を有することになる.

    流動観測
     氷河末端から上流およそ5kmの間の6点で,GPSによるディファレンシャル測位を行い,短期の流動速度観測を行った.測位間隔はおよそ10日間である.

     デブリに覆われたハンモッキー
    モレーン
    帯でも流動が検出され,氷河は最外縁のターミナル
    モレーン
    のすぐ内側まで流動していることが明らかとなった.しかし,ターミナル
    モレーン
    の一部がアイスコアード化しているという観察事実からすれば,その流動に伴って最外縁のターミナル
    モレーン
    が現在も形成されているとは考えがたい.簡易的ではあるが,20cmほど氷に埋め込んだステークが数日間で倒れた.この結果から推定すると,末端付近の表面融解量は相当のものがあり,流動による変化を打ち消しているものと考えられる.

     ハンモッキー
    モレーン
    帯では,クリーンアイスとなる中流部と比較してより大きな上昇成分が観測された.クリーンアイスからハンモッキー
    モレーン
    帯へと移行する地点には明瞭な横断リッジが存在し,この位置で上昇成分の変化に伴う表面形態の変化が発生しているものと推定される.今後はさらにGPS測位の結果を詳しく解析して表面高度の変動を求め,表面融解に伴う低下量を補うような湧昇流の成分も明らかにしていきたい.

     今回の測定は非常に短期間であったこと,さらには,融解最盛期よりも前の時期に観測したということもあって,この結果を年間の移動量に換算することは難しい.今回設置した観測点を一年後に再測することによって,年間移動量を求めていく予定である.
  • *朝日 克彦, 小松 哲也
    日本地理学会発表要旨集
    2007年 2007s 巻 P819
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/29
    会議録・要旨集 フリー

    1.年次
    モレーン

     演者らは近年の氷河変動を明らかにする目的でネパール東部,クーンブ・ヒマールを中心に氷河末端位置の観測を行っている.この際,チュクン氷河において連続性の良い"annual moraine(以下,年次
    モレーン
    )"様の小規模な
    モレーン
    リッジの発達を発見した.そこで本研究では,
    モレーン
    リッジの分布を測量により図化するとともに,この地形が年次
    モレーン
    であるか検討する.
     年次
    モレーン
    はアイスランドやスカンジナビアで発達が知られており,凍結した氷河底ティルが冬季の氷河前進の際に底面氷に貼り付いた状態で衝上して,氷河前縁に小規模なリッジを毎年形成すると考えられている(例えばKrüger,1995).ヒマラヤ山脈においては,ネパール・ヒマラヤ中部のランタン谷のヤラ氷河において年次
    モレーン
    の存在が報告されている(Ono,1985)のみであり,特異な地形である.

    2.研究対象と調査方法
     チュクン氷河は岩屑被覆域をほとんど持たないいわゆるC型の氷河で,面積は2.57km2,集水域の最高地点高度は6230m,末端高度は5100mである.涵養域は比高600mの急峻な雪壁に,消耗域は緩やかな傾斜になっており,氷河の規模や形態ともにヤラ氷河に酷似している.過去15年間で氷河末端位置は平均73.6m後退している.
     
    モレーン
    リッジは比高2m程度の岩屑から成る高まりであり,現氷河末端から小氷期に形成された
    モレーン
    との間約1kmの範囲に同心円状に列を成している.このリッジの分布をGPSで測量した.測量はTOPCON社製GP-SX1を用いてキネマティック測位によって行い,観測域の中心に基地局を設置した.移動局は観測者がアンテナを背負ってリッジ上を移動して計測した.観測中に歩測によるルートマップの作成も行い,図化の際の参考とした.2006年8~9月,3週間滞在して観測を行った.

    3.結果
     リッジはチュクン氷河の左岸において現氷河末端直下から下流方向へ連続し,その数は100列近くに及ぶ.右岸については融氷河水流により水掃された可能性が高い.リッジの表面被覆は,現氷河末端直下ではマトリクスをフリーの新鮮な角礫のみから成るが,徐々に遷移して小氷期
    モレーン
    直下では草本に覆われるほか,礫の酸化,風化も進んでいる.またリッジ同士の間隔は,氷河付近ではおおよそ10mあるが下流では徐々に狭まり2m程度になる.
     実測にもとづく1989年,2004年の氷河末端とほぼ同じ位置にリッジが存在し,現氷河末端までのリッジの数と2006年までの経年数とは調和的である.これらのことから,チュクン氷河に分布する小規模リッジの連続は年次
    モレーン
    であると考えるのが妥当である.
     観測期間中,氷河末端において氷河表面からの落石が頻発し,これが氷河末端の縁に堆積して高まりを形成している様子を目撃した.これらのリッジを形成する礫のファブリックを計測すると,a軸の卓越方向は斜面の最大傾斜線に平行し,傾きは傾斜角に沿う.夏季に氷河の消耗域での融解により取り込まれていた岩屑が解放され,氷河表面を滑動して氷河末端直下に落下し,年次
    モレーン
    が形成されるものと考えられる.少なくとも北欧で知られるような,冬季の氷河末端の衝上運動に伴うプロセスとは成因が異なるであろう.
  • *山縣 耕太郎, 長谷川 裕彦
    日本地理学会発表要旨集
    2014年 2014s 巻 602
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/03/31
    会議録・要旨集 フリー
     本研究では,ボリビアアンデス,チャルキニ峰において,完新世以降の温暖化に伴い縮小した氷河前面における土壌の生成過程を検討する.氷河前面では,氷河から解放された時点から土壌の生成が開始する.このため異なる時代に解放された地点の土壌を比較することによって,土壌の発達過程を検討することができる.また,土壌は,その生成過程において,気候ばかりではなく,地形や地質,植生,水分条件など,様々な環境因子の影響を受ける.こうした地表面環境と土壌発達過程の関係について検討する.
     チャルキニ峰(5392m)は,東コルディレラ山系レアル山脈の南部に位置し,山頂周辺には5つの小規模な氷河とカール地形が確認される.このうち,西カールを調査対象地とした.調査地域の年降水量は800~1000mmで,植生は,高山草原から高山荒原となっている.  西カールは,長さ約5㎞,幅約3㎞の広がりを持ち,カール底には,複数列の
    モレーン
    群が発達している.これらの
    モレーン
    は,完新世初頭の
    モレーン
    (OM),小氷期の
    モレーン
    (M1~M10)および,1980年代初頭に形成された
    モレーン
    (M11)に区分される(Rabatel et.al.2005;長谷川ほか,2013). 
     チャルキニ峰西氷河の前面において,地形単位ごとにピットを作成して,土壌断面の観察を行った.
    モレーン
    間の平坦部分は,地表面の形態と構成物から,さらに氷河底ティル堆積面,氷河上ティル堆積面,氷河底流路,氷河前面アウトウォッシュに区分し,各地形単位毎に断面を観察した. 
    その結果,ほぼ同じ時代に形成されたと考えられる隣接した地形単位間でも土壌発達の違いが認められた.特に,凸状の部分に比べて,凹状の部分で土壌の発達が良い.その要因として,凸状地においては,より物質移動が活発で浸食が生じていることが考えられる.浸食作用としては,霜柱の影響が大きいようである.また,リャマおよびアルパカの放牧も影響していると予想される.一方で凹部では,物質移動で細粒物が集積して土壌の成長が進んでいるものと思われる.
     各地形単位について,異なる時代に形成された地点の土壌断面を比較すると,完新世初頭に形成された地点と小氷期の地点の間では明瞭な土壌層厚の違いが認められる.小氷期
    モレーン
    の中でも,
    モレーン
    間の平坦部では,時代とともに土壌層厚が厚くなる傾向が認められた.一方で,ターミナル
    モレーン
    の頂部ではこうした傾向が認められない.これは,先述したように凸部では侵食の影響が大きいからであろう.
  • *梅村 順
    地盤工学研究発表会 発表講演集
    2003年 JGS38 巻 1091
    発行日: 2003/03/05
    公開日: 2005/06/15
    会議録・要旨集 フリー
    ヒマラヤ地域では近年、
    モレーン
    堰き止め氷河湖の決壊洪水(GLOF)がしばしば発生している。著者は、東ネパールに位置し、その危険性が高いと言われているImja氷河湖を調査した。本文では、GLOFおよびImja氷河湖について紹介すると共に、GLOF対策に関する調査の一環として行ったImja氷河湖を堰き止めている
    モレーン
    の物理的性質およびせん断強さを調べた結果について報告する。
  • *吉田 圭一郎, 廣田 充, 水野 一晴
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 230
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    I はじめに
    近年,様々な生態系において地球温暖化の影響が顕在化している.熱帯の高山植生も例外ではなく,気温や降水量の変化やそれに伴う氷河の後退,消滅により,多大な影響が及んでいる.そのため,熱帯における高山植生の成立過程を明らかにし,現在進行中の気候変化による影響を予測することが急務である(Herzog et al. 2011).
    氷河後退域では,一次遷移などの植生発達に関する研究が数多く蓄積されてきた(例えば,Mizuno 1998やCannone et al. 2008など).最近では,遷移だけでなく微地形や表層物質などといった環境条件と植生発達過程との関連も指摘されつつある(例えば,Raffl & Erschbamer 2004など).大きな標高差を内包する山岳氷河の後退域では,植生発達が成立年代だけでなく,標高に沿って変化する環境条件によっても影響を受けることが予想されるが,これまでほとんど研究が行われてこなかった.
    そこで,本研究では,南米アンデス山系の氷河後退域における植生発達を明らかにし,遷移によるプロセスだけでなく,標高による影響について検討した.

    II 調査地と方法
    本研究の調査対象地はボリビアアンデス,チャルキニ峰(5329m)西カールである.このカールの氷河後退域における植生発達過程を明らかにするため,成立年代の異なる
    モレーン
    上に計88カ所の調査プロットを設け,植生調査を行った.ターミナル・
    モレーン
    では,40mのラインに沿って,2m間隔で2×2mの調査プロットを10個設置し,ラテラル・
    モレーン
    では標高10m毎に1個の調査プロットを設置した.調査プロットでは,植被率,出現種,裸地の比率,最大礫のサイズ,イネ科草本(Deyeuxia nitidula)の株数,草丈および穂の有無などを記載した.

    III 結果と考察
    チャルキニ峰西カール氷河後退域の
    モレーン
    上には,主にイネ科とキク科からなる草本40種が出現した.イネ科のD. nitidulaが優占しており,一番新しい時代の
    モレーン
    にも出現することから,この氷河後退域におけるパイオニア種であると考えられた.
    モレーン
    年代が古いものほど,植被率が増加していた(図1).植被率を目的変数とした一般化線形モデル(GLM)においても,
    モレーン
    年代が最も重要な説明変数であった.これは,
    モレーン
    年代が古くなるにつれて
    モレーン
    上の土壌発達が進み,一次遷移が進行していることを示している.一方で,出現種数は
    モレーン
    年代との対応関係は不明瞭で,標高にしたがって変化していた(図2).出現種数を目的変数とした一般化線形モデル(GLM)においても,標高が最も重要な説明変数であったのに対し,
    モレーン
    年代は統計上有意な変数として抽出されなかった.このことは,山岳氷河の後退に伴う遷移過程においては,種の侵入や定着に,標高に沿った環境条件(例えば,温度条件やシードソースからの距離など)が関わっていることを強く示唆している.本研究の結果から,熱帯高山の氷河後退域における植生発達には,その成立年代だけでなく,標高に沿った環境条件も関与することが明らかとなった.今後,山岳氷河の後退域など,地球温暖化による熱帯の高山植生への影響を理解するためには,その成立年代だけでなく,遷移プロセスに関わる標高に沿った環境条件の差異についても考慮していく必要があろう.
  • 長谷川 裕彦
    地理学評論 Ser. A
    1992年 65 巻 4 号 320-338
    発行日: 1992/04/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    北アルプス南西部,笠ヶ岳北面の打込谷において,最終氷期後半の亜氷期の
    モレーン
    と姶良Tn火山灰 (AT) の層位関係,および同地域の氷河地形発達史を明らかにした.氷河地形,とくに
    モレーン
    の分布から,打込谷における氷河前進期は古い方から順に一ノ沢期・二俣期・右俣期・北圏谷期の4期に区分される,一ノ沢期のラテラル
    モレーン上および二俣期のメディアルモレーン
    ・グランド
    モレーン
    上からATが発見された.二俣期は,ATがティルの直上に堆積していることからAT降灰直前と考えられ,白馬岳松川北股入の赤倉沢期 (25,000y. B. P.) に対比される.同時に,二俣期のグランド
    モレーン
    上でのATの分布から, AT降灰時には氷河がかなり縮小していたことが明らかとなった.氷河地形の開析の程度から,一ノ沢期は最終氷期前半の亜氷期に,二俣期・右俣期・北圏谷期は後半の亜氷期にそれぞれ対比される.
  • *山縣 耕太郎, 長谷川 裕彦, 高橋 伸幸
    日本地理学会発表要旨集
    2013年 2013s 巻 503
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/04
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,ボリビアアンデス,チャルキニ峰において,完新世以降の温暖化に伴い縮小した氷河前面における土壌の生成過程を検討する.今回は,その準備段階として,氷河前面の地形区分と各地形単位上に見られる土壌の特徴把握を行った結果を報告する.チャルキニ峰(5392m)は,東コルディレラ山系レアル山脈の南部に位置し,山頂周辺には5つの小規模な氷河とカール地形が確認される.このうち,西カールを調査対象地とした.チャルキニ峰西氷河の前面において,地形単位ごとにピットを作成して,土壌断面の観察を行った.氷河前面の地形は,完新世初頭以前の
    モレーン
    (H1,H2)と小氷期以降の
    モレーン
    (M1~M13)および
    モレーン
    間の平坦面に区分される.
    モレーン
    間の平坦面は,地表面の形態と構成物から,さらに氷河底ティル堆積面,氷河上ティル堆積面,氷河底流路,氷河前面アウトウォッシュに区分された.各地形単位上に発達する土壌について,M6とM8
    モレーン
    およびその間の平坦面を中心に比較した.その結果,表層の構成物質や,氷河から解放された後の物質移動の影響を受けた土壌断面の違いが認められた.
    モレーン
    リッジは,細粒のマトリックスを含んだ粗粒な岩礫で構成されている.M6上でA層は1㎝程度と薄く,場所によってはA層を欠くところがある.植生のない地表面では,霜柱が形成されている痕跡が認められる.実際に調査期間中の地温観測でも,明け方,一時的に地温が0度以下になっていることが確かめられている.霜柱の形成に伴って,傾斜のあるリッジ上では,表層物質の移動,侵食が生じているものと予測される.一方で,
    モレーン
    間の平坦面は,相対的に土壌の発達程度は進んでいる.これは,霜柱や周氷河作用による物質移動の影響が小さいためであろう.特に氷河前面アウトウォッシュで,現在も水流がある部分に隣接した堆積部分では,15㎝程の厚さのA層が発達した湿性土壌が観察された.
  • *山縣 耕太郎
    日本地理学会発表要旨集
    2017年 2017s 巻 412
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/05/03
    会議録・要旨集 フリー
    氷河から解放された地点では,土壌の生成が開始する.異なる時代に解放された地点の土壌を比較することによって,土壌の発達過程を検討することができる.土壌は,その生成過程において,気候ばかりではなく,地形や地質,植生,水分条件など,様々な環境因子の影響を受ける.特に,植生とは相互に影響を及ぼしながら変化していく.土壌は,地域の生態系において重要な役割を果たし,植生変化の過程を考えるうえでも重要な要素となる. 本研究では,ケニア山Tyndall氷河において,完新世以降の温暖化に伴い縮小した氷河前面における土壌の生成過程を検討する.今回は,その準備段階として,氷河前面の地形区分と各地形単位上に見られる土壌の特徴把握を行った結果を報告する.  ケニア山は,ナイロビの北北東約150km,ほぼ赤道直下に位置する標高5,199mの山岳で,アフリカ第二の高峰であり、東アフリカ大地溝帯の形成が始まった約300万年前から形成された成層火山である. 山頂周辺は,氷期に強い氷食を受け,山腹には標高3000m付近までU字谷が放射状に刻まれている.山頂付近には,現在11の氷河が存在する.その中でTyndall氷河は,Lewis氷河についで2番目に大きな氷河であり,19世紀の終わり以降の変動がよく記録されている(水野,1994).  ケニア山における過去の氷河作用について,Baker(1967)は,ネオグラシエーションの氷河前進期を認め,ステージⅣとした.さらに,Mahaney(1984)は,このステージⅣを堆積物の地形的位置,風化の状態,土壌断面の特徴等から判断して,古い方からTyndall前進期とLewis前進期に区分した.Tyndall前進期の
    モレーン
    は,Tyndall氷河前面のみで認められる.さらに下方のTyndall氷河の谷とLewis氷河の谷が合流する付近には, LikiⅢ前進期の
    モレーン
    が認められる. それぞれの氷河前進期の年代については,堆積物中に含まれる有機物の14C年代からLikiⅢ前進期については晩氷期の約12,500年前,Tyndall前進期については約1,000年前と推定されている(Mahaney et al., 1989).しかし,今回の調査でTyndall期の
    モレーン
    はさらに5つの時期に区分されることが確かめられたので,1,000年前をさらに遡るものも含まれると考えられる.Lewis期の
    モレーン
    は,植生の被覆度や,岩礫を覆う地衣類の被覆度から,Tyndall期より明らかに新しい
    モレーン
    として区別され,小氷期に形成されたものと考えられる(Mahaney et al., 1989).Lewis期の
    モレーン
    についても,さらに2時期に区分可能である.Tyndall氷河前面において,Lweis期の
    モレーン
    より上流側には,明瞭な
    モレーン
    地形は認められない.しかし,先行研究によって1919年から2011年までのいくつかの時期の氷河末端の位置が確認されている(Mizuno・Fujita,2013).  Tyndall氷河前面において,地形単位ごとにピットを作成して,土壌断面の観察を行った.それぞれ
    モレーン上とモレーン
    間凹地にわけて観察を行った.  2015年調査時には,氷河末端から約17mの位置まで植物の侵入が確認された.しかし,その地点では,土壌層を認定することはできなかった.氷河から開放されて4年が経過した2011年の氷河末端位置では,植物はごくまばらに存在する程度で,その周辺に細粒物質がトラップされて堆積している層が厚さ2cm程度で確認された.しかし,この層に有機物はほとんど含まれていない.さらに18年経過した1997年の氷河末端付近では,表層に6~8cmの暗褐色で有機物に富むA層が確認された.さらにこれより古いLewis期の
    モレーン
    上では10~11cm,Tyndall期の
    モレーン
    上では10~33cm,LikiⅢ期の
    モレーン
    の上では33cmのA層の発達が確認された.Tyndall期の中では系統的な土壌層厚の変化は認められなかった.  これらの土壌層は,シルト粒子を主体として,下位の氷河成堆積物とは粒度組成が明瞭に異なることから,土壌層の生成には,風成粒子の堆積が寄与していると考えられる.各時期の土壌層厚から求められる土壌成長速度は,0.03mm/yrから4.4 mm/yrまでとかなり幅がある.また,同じ地形単位の上でも土壌層厚がばらつくことから,風成粒子の堆積,土壌層の成長には,植生の有無などの微細スケールの条件が影響しているものと考えられる.  
  • *佐々木 明彦, 高橋 伸幸, 長谷川 裕彦, 澤口 晋一
    日本地理学会発表要旨集
    2012年 2012s 巻 611
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    ■はじめに 大雪山の高山帯では,泥炭を主体とする土層が湿原や雪田草本群落を中心に分布する(高橋,1992)。これらの土層の生成開始期や層相の変化の時期を明らかにすることは,大雪山の高山帯環境の変遷を議論するうえで重要である。 ところで,大雪山中央部に位置する白雲岳の南東側斜面には,圏谷状の地形(以下,白雲圏谷)がみられる。白雲圏谷内には,堤防状の高まりが複数列認められ,それらは完新世の氷河作用による
    モレーン
    であると考えられる(長谷川ほか,本大会で発表)。これらの
    モレーン
    が異なる時代に形成されたとすれば,
    モレーン
    を覆う土層の生成開始年代も異なるであろう。 本研究では白雲圏谷において土層や斜面構成物を記載し,それらの生成年代あるいは堆積年代を明らかにすることを目的とする。
     ■土層の概要 白雲圏谷の圏谷底でみられる土層は,層厚がおおむね20cm程度かそれ以下の,シルト~細砂を含む腐植質土層であることが多い。ただし,それらの分布は
    モレーン
    と考えられる堤防状の高まりの上に限られる。
    モレーン
    の周囲は,8月半ば以降も残雪が滞留するために,植生に乏しく,腐腐植質土層は生成していない。また
    モレーン
    上の水はけの悪い場所には,イネ科やスゲ科の高茎草本が群落をつくり,そこでは泥炭が生成している。一方,白雲圏谷の外縁部から下方では,土層はおもに泥炭質土層からなり,流水成の砂礫層がそれに挟まることが多い。また,土層の基底部には厚さ5~10cmのスコリア層が特徴的に認められる。
    土層には複数のテフラ層が介在する。これらを中村ほか(1999)にしたがって対比した。圏谷底の
    モレーン
    上の土層には樽前aテフラ(Ta-a;AD1739年)と駒ヶ岳C2テフラ(Ko-C2;AD 1694年)が介在する場合と,これらに加えて白頭山-苫小牧テフラ(B-Tm;AD 947年)が介在する場合がある。白雲圏谷内の
    モレーン
    は,B-Tmの降下以前に形成されたものと,それ以降に形成されたものとに分けられる可能性が高い。また,白雲圏谷の外縁部から下方斜面では,少なくともスコリアの降下期以降に土層が生成し始めている。このスコリアの降下期は5000年前よりは古いと考えられるために,土層の生成開始は5000年前から完新世前半にさかのぼると考えられる。今後,土層の生成開始年代と氷河前進期の関係について詳細に考察していく予定である。
  • 土井 英史, 片山 恒樹, 加藤 敦史
    医科器械学
    1996年 66 巻 4 号 244-
    発行日: 1996/04/01
    公開日: 2021/06/21
    ジャーナル フリー
  • *徳本 直生, 苅谷 愛彦
    日本地理学会発表要旨集
    2022年 2022s 巻 P004
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/28
    会議録・要旨集 フリー

    【はじめに】飛騨山脈・立山火山南部に位置する五色ヶ原には,

    モレーン
    状の微高地群が分布する.従来の研究では,これらは氷河成と考えられてきたが,次のような問題点が挙げられる.すなわち,i)航空レーザ測量技術の進展による高精度・高解像度な地形解析が可能になって以降の研究はほとんどなされていないこと,ii)大縮尺での微地形判読がなされていないこと,iii)詳細な地質学的記載などの根拠に基づく議論に乏しいこと,iv)成因について地形形成作用が多角的に検討されていないこと,である.飛騨山脈の氷河地形に関しては,成因が再検討された結果,崩壊成と結論付けられた例が増えている.以上の経緯から,本研究では五色ヶ原に分布する
    モレーン
    状地形について,1 m-DEMを用いた地形判読と現地踏査を基にその成因を再検討した.

    【結果】

    モレーン
    状地形は,細長く直線に近い堤防状地形(lv),楕円形のマウンド状地形(md),環状に湾曲するループ状地形(md)の3つの形態の微高地からなることがわかった.lv は比高0.5-2 m,長さ数mから約150 m,幅2-10 mであり,長軸の走向は台地の一般最大傾斜方向とほぼ一致する.md は比高最大5 m,長径数mから40 mである.lp は比高数m,幅数mから20 mであり,長さ100 m近く連続するものが多い.md と lp は,lv の斜面下方で卓越する.また,これら微高地群の間には凹地が分布する.凹地は大きなもので長径30 m前後であり,周囲にlpを持つものもある.踏査の結果,
    モレーン
    状地形は安山岩・アグルチネート岩塊を含む不淘汰岩屑層からなることがわかった.地表面に巨礫が濃集し,細粒物質に乏しい.擦痕のついた基盤岩や氷食礫は認められない.

    【考察】

    モレーン
    状地形の成因を再検討し,次の結論を得た.a)
    モレーン
    状地形は氷成とされてきたが,以下の点で否定される.すなわち,氷河の推定流動経路に氷河侵食地形(氷河擦痕のある基盤岩や氷食礫)が認められないこと,
    モレーン
    状地形の構成物質に氷河底変形構造など氷河地質特有の構造が認められないこと,である.b)
    モレーン
    状地形は岩石なだれで形成されたと考えられる.その発生域は,lv の長軸方向の延長から五色ヶ原西方にかつて存在した火山体と考えられる.c)微高地群間の凹地は,岩石なだれが雪氷塊を含んだ状態で定置したことに起因する.移動物質内の雪氷塊が融解することで地表面が陥没し,凹地が形成された.これは,岩石なだれ発生域の火山体が氷河や大型越年雪渓を湛えていたことを前提とする.d)この前提に依れば,岩石なだれの発生年代は更新世後期と考えられる.

  • ニ次元比抵抗探査による分布の推定
    竹中 修平, 薮田 卓哉, 福井 弘道
    雪氷
    2010年 72 巻 1 号 3-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル オープンアクセス
    2008年5月,イムジャ氷河湖の堤体の内部構造の把握を目的として,二次元比抵抗探査および地表 面踏査による調査を行った.本論文ではその結果をもとに,堤体内のデッドアイスの分布の推定を試 みた.その結果,1)デッドアイスは堤体の湖岸付近の地下で,両岸のラテラル
    モレーン
    の間に連続的 に存在し,2)その下面は少なくとも堤体基部で最も標高の低い部分まで達していると見られることが 分かった. 水流や堤体表面からの融解によってデッドアイスの表面が徐々に低下し,湖水位は最終的 に氷河湖決壊洪水(GLOF)の危険のないレベルにまで下がる可能性が高い.
  • 青木 賢人
    地理学評論 Ser. A
    1994年 67 巻 9 号 601-618
    発行日: 1994/09/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    木曽駒ヶ岳周辺における,新期
    モレーン
    を構成する礫に形成された風化皮膜の厚さは平均4~8mmであった.その結果を,柳町 (1983) によって得られた千畳敷カールの
    モレーン
    の形成年代と対比することによって,
    モレーン
    構成礫の風化皮膜の厚さと形成年代との関係をベキ関数および対数関数で回帰し,風化皮膜の発達曲線を求めた.それによって,年代未詳の
    モレーンの風化皮膜の厚さからモレーン
    の形成年代を推定した.その結果,調査地域の氷河前進期は古い方から3.5万年B.P.前後の伊奈川期(最終氷期前半の亜氷期), 2.0万年B. P.前後の西千畳敷期(最終氷期極相期),1.0~1.4万年B、P.前後の三ノ沢期(晩氷期中の新ドリアス期)に区分できた.これらの氷河前進期の区分は統計的にも妥当である.
  • *山縣 耕太郎, 奈良間 千之
    日本地理学会発表要旨集
    2019年 2019s 巻 432
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/30
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
     東アフリカ赤道直下に位置するケニア山では,近年山頂周辺に分布する氷河が急速に縮小していることが確認されている.こうした氷河の縮小,消滅は,山麓に生活する住民や周辺地域の生態系に多大な影響を及ぼす可能性が指摘されている.本研究では,ケニア山の氷河変動の将来予測に寄与するために,完新世以降の長期的な変動を復元し,その特性を明らかにすることを目的とする.
    2.調査地域
     ケニア山は,ナイロビの北北東約150kmに位置する標高5,199mのアフリカ第二の高峰で,東アフリカ大地溝帯の形成が始まった約300万年前から260万年前を中心に形成された成層火山である.山頂周辺は,氷期に強い氷食を受け,火道を満たした堅い溶岩が削りだされ岩峰を形成している.山腹にはU字谷が放射状に刻まれ,氷河期には標高3000m付近にまで氷河が拡大したと考えられている(Mahaney et al., 1989).
    山頂付近には,現在11の氷河が存在する.特に山稜の南斜面で発達が良い.これは,この方位が日射に対して影となっていること,および日々の局地循環による雲の発達がこの斜面で特に著しいことによる(白岩,1997).山稜南斜面に位置するLewis氷河とTyndall氷河は,ケニア山における1番目と2番目に大きな氷河である.これらの氷河については19世紀の終わり以降の変動がよく記録されている(水野,1994).
    3.ケニア山における氷河地形編年
    ケニア山における過去の氷河作用について,Baker(1967)は,ネオグラシエーションの氷河前進期を認め,ステージⅣとした.さらに,Mahaney(1984)は,このステージⅣを堆積物の地形的位置,風化の状態,土壌断面の特徴等から判断して,古い方からTyndall前進期とLewis前進期に区分した.Tyndall前進期の
    モレーン
    は,Tyndall氷河前面のみで認められる.さらに下方のTyndall氷河の谷とLewis氷河の谷が合流する付近には, LikiⅢ前進期の
    モレーン
    が認められる.
    それぞれの氷河前進期の年代については,堆積物中に含まれる有機物の14C年代からLikiⅢ前進期については晩氷期の約12,500年前,Tyndall前進期については約1,000年前と推定されている(Mahaney et al., 1989).Lweis期の
    モレーン
    については,小氷期に形成されたものと考えられている.
    4.Tyndall氷河・Lewis氷河前面における完新世氷河地形の再検討
    今回の調査でTyndall期の
    モレーン
    は,さらに5つの時期に区分されることが確かめられた.最も下流に位置するTM5は,LikiⅢ期の
    モレーン
    に接していることから,ほぼ同じ時期のものと考えられる.したがってTyndall期の
    モレーン
    は,約1万年前から1,000年前までの時期に形成されたものと考えられる.それぞれの年代については,さらに検討を必要とする.
    Lewis期の
    モレーン
    は,植生の被覆度や,岩礫を覆う地衣類の被覆度から,Tyndall期より明らかに新しい
    モレーン
    として区別できる.Lewis期の
    モレーン
    については,Tyndall氷河前面においてさらに2時期,Lweis氷河前面においてさらに4時期に区分可能である.それぞれの年代については,Lichenmetryによって検討を行う.
    Lweis氷河とTyndall氷河を比較すると,Lweis氷河では,Tyndall期とLweis期の氷河拡大規模がほぼ同程度であるのに対して,Tyndall氷河前面ではLweis 期の拡大規模の方が明らかに小さい.このような挙動の違いは,涵養域および圏谷出口付近の地形の違いによるものと考えられる.
  • *岩崎 正吾, 青木 賢人, 澤柿 教伸, 松元 高峰, 佐藤 軌文, 安仁屋 政武
    日本地理学会発表要旨集
    2005年 2005s 巻
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    会議録・要旨集 フリー
    1. はじめに
     LGM には一つの氷体としてアンデス山脈南部を広く覆っていたパタゴニア氷原は,現在では北パタゴニア氷原と南パタゴニア氷原に分かれ,氷縁に分布する多数の溢流氷河を通じて急速に消耗しつつある (Aniya, 1992; Aniya et al., 1997).それに伴う 1944 年以降の排水の量は,海水準上昇の 3.6 % に相当すると見積もられている (Aniya, 1999).現在のパタゴニア氷原の総面積は 17,200 km2: (Aniya et al., 1996) であるが,これは南半球においては南極氷床に次ぐ値であることから,その変動の歴史や性質が注目される.本発表では,北パタゴニア氷原の北東縁に位置するエクスプロラドーレス氷河の前縁で 2004 年 12 月に行った現地調査の成果のうち,完新世後期の氷河の消長に関する新たな知見を報告する.
    2. 調査地域
     エクスプロラドーレス氷河は,パタゴニア最高峰のモンテ・サン・ヴァレンティン (3,910 m) の北斜面に源を持つ雪崩涵養型の溢流氷河であり,北北東方向に流下して本谷 (エクスプロラドーレス谷) 直前の高度約 200 m 付近にまで氷舌を伸ばしている.全長は約 30 km におよび,消耗域である氷河末端付近の約 2 km の範囲は概してデブリに覆われるハンモッキーな表面形態をなす.
     いっぽう氷河末端と本谷との間には,氷舌を取り巻く方向に連続する数列の堤防状地形が観察される.そのうち最外縁のものは,氷舌側での基底からリッジまでの比高が最大約 100 m で,約 4 km に渡ってほぼ連続して分布するターミナル
    モレーン
    である.いっぽう,その最外縁ターミナル
    モレーン
    と氷舌の間に分布する堤防状地形は,高さが 10 m未満で,リッジの連続は最大でも 50 m 程度のアイスコアード
    モレーン
    である.
    3. 完新世後期の末端変動に関連する年代試料
     最外縁ターミナル
    モレーン
    を構成している砂礫層は,氷河下流方向に傾斜する層構造を持ち,その構造に沿って多数の木片を挟在している.これらの事実は,かつてのエクスプロラドーレス氷河の末端が前縁の植生帯に突っ込み,植物を巻き込みながら最外縁ターミナル
    モレーン
    を形成したことを意味する.本研究では,それら木片のうち,
    モレーン
    の基部付近と最上部付近のものを含む計 7 つを採取し,さらにアイスコアード
    モレーン
    中からも 3 つの木片を得た.それら年代試料によって,最外縁ターミナル
    モレーン
    を形成した氷体が,その位置で活動的に存在していた時期と消耗に転じた時期などを議論できるであろう.木片の炭素放射年代は現在測定中であるが,パタゴニア氷原から溢流する他の氷河に関して知られている 3,600 yr BP (I),2,200 yr BP (II),1,600 _-_ 900 yr BP (III) そして小氷期 (IV) の氷河前進 (Aniya and Naruse, 1999) が,エクスプロラドーレス氷河に関しても認められるのか否かが興味深い.
     ところで最外縁ターミナル
    モレーン
    の構成層中の礫は,主に角礫_から_亜円礫であるが,10 % 程度の割合で高円磨度の礫を含んでいる.このことはエクスプロラドーレス氷河が,最外縁ターミナル
    モレーン
    を形成するよりも前に,分布域を大きく縮小していたことを示唆しているのかもしれない.
     当日の発表では,採取した木片の C14 年代を示しつつエクスプロラドーレス氷河の完新世後期の末端変動を論じる.
    参考文献
    Aniya, M. (1992) Bulletin of Glacier Research, 10, 83-90.
    Aniya, M. (1999) Arctic, Antarctic, and Alpine Research, 31, 165-173.
    Aniya, M. and Naruse, R. (1999) Transactions, Japanese Geomorphological Union, 20, 69-83.
    Aniya, M., Sato, M., Naruse, R., Skvarca, P., and Cassa, G. (1996) Photogrammetric Enginnering & Remote Sensing, 62, 1361-1369.
    Aniya, M., Sato, M., Naruse, R., Skvarca, P., and Cassa, G. (1997) Arctic and Alpine Research, 29, 1-12.
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