本研究では東京都大田区地域における黒湯の有機成分およびフミン酸の熱分解TMAHメチル化GC/MS法により,それらの地球化学的特徴を明らかにし堆積環境と起源生物を推定した.大田区地域の黒湯のpHは7.6-8.5で掘削深度は30-120 mであった.フミン酸濃度は5.8-325 mg/Lで透視度(1.8->30 cm)とは反比例関係にあった.脂肪酸は短鎖n-アルカノイック酸(C12-C19)が酢酸エチル抽出物およびフミン酸の熱分解生成物共に最も多く,少量の長鎖n-アルカノイック酸(C20-C32)および分岐脂肪酸(C13-C17)が含まれる.またステロールはコレステロールが最も卓越する.これらの結果より黒湯の有機成分は主として藻類に由来し,少量の維管束植物およびバクテリアの寄与がある.黒湯の掘削深度から推定すると,堆積年代は0.5-1 Ma程度で,堆積環境は海洋の陸棚斜面と推定される.
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