紅斑熱群リケッチア, 発疹チフス群リケッチアに共通の抗原である17kDaのタンパク質をコードする遺伝子について,
Rickettsia japonica,
Rickettsia rickettsii, Rickettsia conorii, Rickettsia typhiおよび
Rickettsia prowazekiiのそれぞれの塩基配列を比較して紅斑熱群リケッチアおよび発疹チフス群リケッチアに共通のプライマーR1, R2と
R.japonicaに特異的なプライマーRj5, Rj10を合成した.R1, R2によるPCRで
R.japonica, R.rivkettsii, R.conorii, Thai tick typhus TT-118,
Rickettsia sibirica, Rickettsia montana, Rickettsia akari, R.typhi, R.prowazekiiおよび徳島県で紅斑熱群リケッチア症患者から分離された片山株を鋳型とした場合, 約540bpの特異的DNAが検出された.Rj5, Rj10によるPCRで片山株にも357bpのDNAが検出され, 片山株は
R.japonicaであることがわかった.神奈川県の紅斑熱群リケッチア症患者の血餅でR1, R2では537bp, Rj5, Rj10では357bpのそれぞれ特異的なDNAが検出され, この患者は
R.japonicaによる感染であることが確認された.また神奈川県の山地より採集されたヤマトマダニおよびキチマダニはR1, R2およびRj5, Rj10を用いたPCRでそれぞれに特異的な537bp, 357bpのDNAが検出された.これらのことより, 神奈川県内でのR.japonicaを媒介するマダニはヤマトマダニとキチマダニが考えられた.またR1, R2によるPCRでのみ特異的なDNAが増幅されるものが存在し, これらのマダニには
R.japonica以外の紅斑熱群リケッチアおよび発疹チフス群リケッチアが存在する可能性が示された.
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