福井県大飯郡高浜町地下から自然貝層が見いだされた. 地下2mから6mまでの地層を, 岩相や貝化石の組み合わせの特徴から6つの層準に区分し, そのおのおのの貝化石群集および有孔虫化石・介形虫化石を解析した. 解析結果と
14C年代との組み合わせから, 5,000年前から現在までの古環境の変遷が明らかになった. 5,000年前は潮間帯泥底で, 約4,000年前頃小海進により内湾の砂泥底になった. その後, 海面は少しずつ後退し, 2,000年前には潮間帯泥底になり, 1,000年前には汽水性の潟になった. それ以降, 本地域は沼になり, 最近の埋め立てにより現在に至った.
産出した貝化石の中には, コゲツノブエガイ, カニノテムシロガイ, ハイガイ, シオヤガイなどの現在の若狭湾には生息しない, 亜熱帯性のものが含まれている.
今回の研究で, 関東地方では5,000~4,000年前に消滅した亜熱帯性の貝化石が日本海側で約2,000年前まで産出すること, およびこれまで北陸地域においては, はっきりしなかった4,000年前の小海進の存在が明らかになった.
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