【始めに】
以前より従来のマジックベルトを使用したAFOに対して自力装着が困難な患者様に多く接してきた。折り返しのマジックベルトなどはリングを通して張り合わせるという動作が必要で高次脳機能障害、認知症などを有していると困難である事が多く、下肢を組む動作は股関節に疼痛があると困難である。この様に自力装着が出来ない理由は様々であるが、高齢者の片麻痺患者にとって動作が複雑である事は否めない。そこで今回、有薗製作所の協力を得、着脱動作が簡易に出来るAFOを作成し若干の知見を得たので報告する。
【AFO紹介】
従来のAFOをベースに作成した。材質はサブオルソレンを使用。固定ベルトは従来のマジックベルトではなく下腿前方部、足背部にカフを取り付けフタ式にし、留具としてスキー靴などで使用されている
ラチェット
ベルトをカフに取り付けた。また、ワンタッチで外れるようにカフのジョイントはバネ付の蝶番金具を使用した。さらに、AFOを立て掛ける装着台を作成し着脱の際に下肢を組む必要がないようにした。
【特徴及び考察】
材質は現在ポリプロピレンが多く使用されている。しかし今回、バネ付の蝶番金具を取り付ける際に割れてしまう恐れがあった為、柔らか味のあるサブオルソレンを使用した。また
ラチェット
ベルトは締め込みが可能で、従来のマジックベルトと同様に下腿周径変化への対応はある程度可能である。それでは従来のAFOとの違いを述べる。このAFOのメリットとして、装着台を使用し地面に置いて着脱する為下肢を組んで空中で装着する必要がない。また前方のカフを閉じるだけと手順が簡単である。デメリットとしては重さが約1.8倍、靴の使用が限定される(カフや
ラチェット
ベルトの受け具が大きい為)。また装着台を一定の場所で使用する際は良いが、複数の場所で使用する際持ち運びに手間がかかる。このようにまだまだ改良の余地はあるが、「着脱動作が簡易なもの」という点では一定の成果が得られたと考える。
【終わりに】
今まで「こういう装具があれば」「こういう継ぎ手があれば」と思うことは多々あったが自分で壁をつくり「無理だろう」と諦めてきた部分があった。しかし、これでは技術の向上や新しいものを生み出す事は出来ない。今回の経験を通して既定の枠に囚われず考える事の大切さを再認識した。
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