【目的】
野球現場における腰痛の実態を把握し,予防の一助とすることを目的とする.【方法】
2016 年12 月から2017 年3 月の間に,
リトルシニア
中学野球チームに所属する146 名,高校野球部に所属する94 名の計240 名に対しアンケート調査を行った.調査項目は腰痛有訴率,整形外科受診率,検査・診断内訳,疼痛誘発動作とした.【結果】
腰痛経験のある選手は240 名中100 名(41.6%) であり,そのうち整形外科受診者は100 名中39 名(39.0%) であった.アンケートにより渉猟し得た中での診断内訳は,腰椎分離症19 名(49.0%),腰椎椎間板ヘルニア1名(2.0%),確定診断が不明な腰痛19 名(49.0%)であった.検査内訳は,X 線のみ,またはX 線以外の検査が不明な選手16 名(41.0%),MRI撮影者15名(38.5%),MRIとCT撮影者8名(20.5%)であった.疼痛誘発動作では,腰痛有訴者100名中57名(57.0%),受診した選手では39 名中28 名(71.8%) が伸展時痛を有していた.
【考察】
野球現場において青少年野球選手の腰痛有訴率は高いが整形外科受診率は低かった.診断内訳は,腰椎分離症の割合が高いため,野球現場において念頭におく必要があると考えた.検査内訳の結果より,確定診断が困難であり,正診率が低いことが予測される.疼痛誘発動作では伸展時腰痛を有している選手が半数以上であった.当院では伸展時腰痛を有している選手の56.1%が初期の腰椎分離症であり,MRIとCT から総合的に治療方針を判断する必要があると過去に報告している.このことより,受診していない選手や,確定診断のための検査が不十分な選手の中には腰椎分離症が隠れている可能性が考えられる.以上のことより,野球現場での腰痛に対する早期発見,早期治療が重要であり,確定診断の上で適切な治療展開,腰痛に対する認識の改善が必要であると考える.
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者には書面及び口頭にて説明し同意を得た上で調査を行った.
抄録全体を表示