国産試作カルシウム脱酸鋼の酸安定型介在物は表3に示されているように, 上部, 中央部, 下部ともほとんど同様で, 主にdicalcium silicateおよびmono calcium silicateで, MnSも全試料にわたって分布している.表4は介在物の組成と電子顕微鏡による検出 (同定) 率を示すものである.dicalcium silicateおよびmono calcium silicateは全試料にわたって存在し, 量的にも約60%以上を占めていることがわかった.
OECDカルシウム脱酸鋼から検出したものでは3CaO・2SiO
2と2CaO・SiO
2が全介在物の約86%を占めている.また分析値や光学顕微鏡からMnS系硫化物がかなり多いことも事実である.
国産試作カルシウム脱酸鋼とOECDカルシウム脱酸鋼の抽出電子回折同定した介在物を比較すると, 国産試作鋼の介在物中のCaO濃度はOECD鋼のそれに比べて平均して高いことがわかった.これは化学分析値 (表1) とも一致している.
OECDのカルシウム脱酸鋼と国産の試作特殊脱酸鋼を主としてすくい面付着物をとおして比較検討した結果, 前者においてはCaが多量に切りくず離脱部に付着し, Mnが同時に比較的切れ刃に近い部分に付着してFeの付着を阻止している.これに反し国産試作鋼ではCaの付着程度は少なくMnのつきかたも少ない.OECDカルシウム脱酸鋼および国産シリコン脱酸鋼では, Ca, SiおよびAlの分布がほぼ平行的で2CaO・Al
2O
3・SiO
2の生成を暗示するようである.すくい面摩耗の進行は両者において大差ないが切削速度150m/minではややOECD鋼の方が少ないようである.
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