リン酸二水素アンモニウムと各種アルミニウム化合物との反応は固相反応であるため,同一条件下(モル比R,加熱温度および加熱時間など)で作製しても,その反応生成物である
リン酸アルミニウム
はリン酸系の場合とまったく異なり,1) とくに, 300°Cで加熱した場合は,アルミニウム原料によらず2θ=15.4, 22.8, 30.5°に強いX線回折ピークを有する物質(物質Jとする)が生成する。この物質Jは約7.5wt%のアンモニアを含んでいる。2) またα-アルミナおよびγ-アルミナ-リン酸二水素アンモニウム系で,R=1/3とし500°Cで20時間加熱すると,四メタ
リン酸アルミニウム
Al
4(P
4O
12)
3のB型だけを単独につくることができる。3) またAl
4(P
4O
12)
3のC型が,α-アルミナおよび金属アルミニウム-リン酸二水素アンモニウム系で, R=1/2~1/4, 700°Cで加熱すると容易に生成する。C型はリン酸系においてはまったくその生成が認められなかった。4) リン酸二水素アンモニウム系において,K物質やAlPO
4(Berlinite型)はまったく生成しなかった。
これらの
リン酸アルミニウム
の酸性度は,酸強度(pK
a)が+1.5~+6.8に散在し,その中でもpK
aが+3.3~+6.8の範囲で比較的大きい。またリン酸系にくらべて,これらの
リン酸アルミニウム
の酸性度は非常に小さい。そして,酸性度と四メタ
リン酸アルミニウム
Al
4(P
4O
12)
3のA型, B型, C型および物質Jとの間にはなんらの相関関係もなかった。生成温度が低いほど,酸性度が増加すること,モル比Rが小さいほど,吸湿性が大きいこと,またこれらの
リン酸アルミニウム
を水洗すると酸性度がきわめて小さくなることから,これらの
リン酸アルミニウム
の酸性発現の主なる要因は,遊離のリン酸によるBrφnsted酸であると考えられる。
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