本稿においては,刑務所管理の新しいスタイルであるネオ・リベラル矯正主義について検討を行う.第1に,刑務所改革の力学は三つの主要な枠組みからなることを歴史的に示す.その枠組みとは,個人の規範化を目指す《社会的》矯正主義,刑務所による刑罰の体刑的かつ加辱的性格の温存,施設秩序に受刑者が服従する必要の三つである.ここでは,刑務所が,事実上規律の施設や専制的な政治体制と共通点をもつことを示す.第2に,一方で,受刑者の権利の拡大,他方で,リスク管理を指向する刑罰現象の台頭という,相矛盾する二つの動向が1970年代の終わりから登場し,この二つの動きにそって,施設の改革と,(フーコーの影響を受けた論者や刑務所廃止論者からの)刑務所に対する批判が受容されていることを示す.ここでは,今日,逆説的にではあるが自律,自由,そして責任の自覚化の名の下に,拘禁秩序の構築に受刑者の積極的な関わりが求められている点を指摘したい.その上で,施設が担う規律への使命を強化・刷新しながら,全体主義に対する批判をその固有の働きに統合するという離れ業に成功している点を検討する.
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