目的 医学生が進路選択をするにあたって,臨床と比較すると公衆衛生医師に関する情報は得にくい状況である。これを改善するために,医学生の就職活動におけるインターネットサービスの活用状況を調査し,その結果に基づいて,6つの動画を制作して公衆衛生医師の確保に向けた広報活動を実践した。
方法 調査対象は全国の医学部のうち研究協力の得られた18大学の3年次以上の医学生である。医学部の公衆衛生分野の教室へ依頼し,対象学年の学生に一斉メール送信等によりGoogle Formsで作成した無記名自記式アンケートを配布した。「就職情報を収集するのに活用しているインターネットサービス」「就職情報を知るための動画1本あたりの望ましい長さ」「就職先について知りたい情報」を聴取し,制作する動画の配信環境の設定,長さ,内容に反映させた。
活動内容 3年生14人,5年生177人,6年生300人の合計491人の医学生から回答を得て,集計分析を行った。就職情報を収集するのに活用しているインターネットサービスとして最も多いのはホームページが94.7%であり,ブログ42.0%,Twitter 32.6%,YouTube 18.9%と,一般的な学部の就活生と比較してソーシャルネットワーキングサービスの活用は少なかった。望ましい動画の1本あたりの長さは5分以内までの合計が55.8%,10分以内までの合計が95.1%であった。就職先について知りたい情報は,働いている若手医師の雰囲気が93.1%と最も多く,働いているベテラン医師の雰囲気も74.1%と高かった。これらの結果に基づき,若手からベテランまで6人の出演者を選定して,それぞれの医師の雰囲気が伝わる内容のインタビュー動画を,一人あたり5分以内に編集して制作した。完成した動画は動画配信サービスの一つであるYouTube上に公開し,全国保健所長会のホームページのバナーからもアクセス可能にした。
結論 医学生の就職活動におけるインターネットサービスの活用状況を踏まえながら,そのニーズに合わせ,公衆衛生医師の確保に向けて,動画を用いた広報活動を始めることができた。動画を用いた広報を有効にするには,各自治体や大学や医療機関との連携を深めることで,オンラインでも対面でも人的ネットワークを拡大しながら,医学生や臨床医における情報源の認知度を高めていく必要がある。
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