日本の近代鯨類学の草創期における東洋捕鯨株式会社と
ロイ
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チャップマン
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アンドリュース
の影響を文書資料から調べた。東洋捕鯨の前身会社はナガスクジラとシロナガスクジラについて社内名称を生物学的種に基づいて固定し、それが標準和名として使用されるようになった。アンドリュースはひげ鯨に加え、歯鯨でも日本近海個体について初めて標本の観察から学名を比定した先駆者であった。そのような認識は当時の日本の動物学者も持ちあわせ、永澤六郎教授はアンドリュースと手紙で議論した結果を日本産鯨類の学名比定の論文に反映させていた。東洋捕鯨が社内名称として生物学的種の呼称を使用したこと、アンドリュースが標本を観察して学名を比定したこと、この実践が日本の鯨類学の近代化の端緒となった。
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