オサガニヤドリガイ(新称=Pseudopythina macrophthalmensis Morton and Scott 1989)はホンコンを模式産地として記載されたウ
ロコガイ
超科の二枚貝である。この貝は, 干潟に生息するスナガニ科の一種ノコハオサガニの体表に多数着生した状態で採集されたが, 採集例はその一例のみでその後ホンコンでも採集されていない。今回, 沖縄県西表島船浦の干潟で, フタバオサガニの体表よりこの貝を多数採集したので, 日本初記録として, またカニに付着して生活するという特異な生態に関して得られた知見について報告する。船浦で採集したフタバオサガニ65個体中51個体にオサガニヤドリガイが着生していた。船浦のほか, 西表島仲間川ではフタバオサガニに付いたオサガニヤドリガイを確認できたが, 沖縄島では2地点のフタバオサガニ個体群について調査したものの貝は採集されなかった。一方タイ南部のプーケットでは, やはりフタバオサガニに付いた状態の同種を確認しており, オサガニヤドリガイの分布域はインドー西太平洋の亜熱帯, 熱帯域に広がっていることが明らかになった。一旦カニから外したオサガニヤドリガイを一晩カニとともに飼育したところ半数以上の貝が再びカニに付着していた。このことは, カニの脱皮殻と共に貝がカニの体から離れても, 再びカニの体表に付着する能力を備えていることを示している。
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