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クエリ検索: "ロサンジェルス・フィルハーモニック"
1件中 1-1の結果を表示しています
  • 宮川 渉
    音楽学
    2020年 66 巻 1 号 51-68
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー
      カイヤ・サーリアホは,9人の奏者とライブ・エレクトロニクスのための《光の弧》(1986)を作曲する契機となったものはラップランドで見たオーロラであり,その体験を音楽で表現しようとしたことだと述べている。実際サーリアホはこのオーロラのイメージからインスピレーションを受けたデッサンをいくつも制作し,それらをもとに曲を構想した。これらのデッサンを含めたサーリアホが《光の弧》を作曲する上で残した一次資料は,今日スイス・バーゼルのパウル・ザッハー財団に保管されている。本稿の目的は,これらの資料を分析することにより,《光の弧》においてサーリアホの制作したデッサンが創作過程の中でいかなる役割を果たしていたかを明らかにすることである。
      その結果,サーリアホがこれらのデッサンを制作したのはオーロラのイメージを表現するためだけではなく,彼女独自の音楽形式を構築するためでもあったことが認められた。サーリアホにとって常に音楽形式は重要な関心事であり,そこで彼女が打ち出したのが「音色軸 axe timbral」という概念である。「音色軸」は楽音とノイズの関係を指し,サーリアホはこの関係を調性音楽における協和音と不協和音の関係に代わるものとして使用することを考えた。サーリアホは「音色軸」,音域,リズムなどを異なった形で組織化することにより,ダイナミックな形式を構築することを目指した。その中でデッサンが重要な役割を果たしていたと考えられる。
      しかしサーリアホは楽譜をデッサンに記した通りに書いたわけではなかった。実際デッサンと楽譜にはどのような違いがあるのか調べてみると,サーリアホはデッサンに縛られることなく,それをもとに柔軟に作曲していることが明らかになった。
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