ロジングリセリンエステルを含む中性ロジン
サイズ剤は, 中性条件下でも効果のあるサイズ剤として応用が広がりつつある。これまでの研究から,
ロジングリセリンエステルにはアビエチン酸やマレイン化ロジン
の溶出を防ぐ役割があることが示されている。今回はこのことを明らかにするため, いろいろな抄紙条件における
ロジン
グリセリンエステルの挙動をToF-SIMSでの可視化により解析することを試みた。
ToF-SIMSを用いてイメージングをする場合, 物質特有のピークを見つけ出さなければならない。我々は,
ロジン
グリセリンエステルのみを確実に検出するために, 重水素ラベルの
ロジン
グリセリンエステルを合成し, その重水素イオンを検出することとした。自然界には重水素はほとんど存在しないため, 目的とする
ロジン
グリセリンエステルのみを選択的に可視化することに成功した。
ToF-SIMSのイメージングとサイズ度の測定結果から,
ロジン
グリセリンエステルは中性条件のみならず, アルカリ条件においても可溶化せずにパルプ表面に留まっていることが明らかとなった。一方,
ロジン
グリセリンエステルを含まないサイズ剤を用いた場合, 中性条件やアルカリ条件ではアビエチン酸やマレイン化
ロジン
は溶出し, サイズ効果は現れなかった。以上のことは,
ロジングリセリンエステルはアビエチン酸やマレイン化ロジン
の溶出を防ぐ役割を担っているという以前の研究結果を支持する。
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