従来,
ワクモ
の生態は夜間に鶏体から吸血し,昼間は鶏体から離脱するとされている。著者らは養鶏場におけるトリサシダニの調査に際して,昼夜を通して2種類のダニが鶏体に寄生し,繁殖している事実を認めた。ダニの形態学的特徴の観察から,寄生していたのはトリサシダニと
ワクモ
と同定された。鶏から離脱する
ワクモ
数を2昼夜にわたって調べたところ極めて僅かであり,昼間に同じ鶏の腹域と下腿域の羽を刈り取り,
ワクモ
の検出を行ったところ,膨大な数の
ワクモ
卵,幼虫,第一若ダニ,第二若ダニ及び成虫が検出された。さらに,検出した卵を孵化,育成して成虫の形態を観察した結果は
ワクモ
であった。以上の結果から,昼間も鶏体を離脱しないで鶏体に常在寄生する
ワクモ
が存在することが明かになった。
半径約50km以内にある17養鶏場で飼育されている54群の産卵鶏について常在寄生ダニ類の寄生状態を調査したところ,常在寄生
ワクモ
またはトリサシダニの単独寄生が4養鶏場の7群の鶏に,両ダニの共寄生が同じ養鶏場の5群の鶏に認められた。この事実は常在寄生性
ワクモ
の存在が特殊な事例でないことを示している。
ワクモ
が常在寄生する理由については明かでない。従来の研究で常在寄生性
ワクモ
が見落されていた,或いはトリサシダニの寄生によって
ワクモ
の寄生生態に変化が生じたことなどが考えられる。これらは今後の研究課題である。
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