目的 ワンクリック詐欺
、架空請求やねずみ講など、インターネット犯罪に大学生が巻き込まれるケースが多発している。警視庁などでは無視するようよびかけているが、請求されるままに支払うケースもある。その理由として「契約」という法律行為に対する理解不足が推測できる。そこで、大学生を対象に契約に関してどの程度、理解できているか、1コマの講義を履修することでどの程度、改善されるかを明らかにするために二者択一式のテストを実施した。
方法 調査対象はN大学、J女子大学の受講生のうち、大学で契約やクーリング・オフに関する講義を受けたことがない学生(計156名)である。調査は2009年10月~11月である。
結果 「契約は口約束で成立する」(○:正答率46%)、「契約が成立するためには双方の押印が必要である」(×:同49%)、「15歳は契約することができない」(×:58%)など、大学生の契約に関する基本的知識の理解度はほぼ5割である。結果として「契約が成立しても、支払い前なら辞められる」(×:58%)、「インターネットの契約は、注文ボタンを押したときではなく事業者からの承諾通知が届いたときに成立する」(○:65%)など実践問題の正答率も低い。講義後のテストでは基本的知識の正答率はほぼ9割と大幅に改善されるものの、実践問題の改善は7-8割に留まった。新学習指導要領では「D 身近な消費生活と環境」という新たな枠組みが立てられた。消費生活は講義だけでなく、ケース・スタディを通して理解を深めることが出来る領域である。ロールプレイなどを積極的に活用しながら、早急に契約に関する正確な知識を学生たちに定着させていく必要がある。
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