本稿は、NHK学校放送音楽番組『ふえはうたう』(小学校3年生向け)と『ゆかいなコンサート』(小学校4年生向け)の1987年度および1993年度の放送内容を、楽曲と演出の両面から分析したものである。NHKアーカイブス学術利用研究(連携型)として、NHK放送文化研究所の研究員と大学の研究者で共同執筆をした。
『ふえはうたう』はリコーダー演奏を中心とした「表現」活動を重視し、児童の演奏技能の習得と音楽への親しみを育む構成となっている。一方、『ゆかいなコンサート』はクラシック音楽の鑑賞を通じて感性を育てることを目的とし、多様な楽器や演奏形態を紹介することで、音楽の広がりを体感させる内容である。両番組は学習指導要領に準拠しつつ、教科書掲載曲やNHK教育番組の楽曲を活用し、子ども向け音楽レパートリーの形成に大きく寄与した。
特に『ふえはうたう』では、『みんなのうた』や『おかあさんといっしょ』など他番組の楽曲も多く取り入れ、教育番組間の垣根の低さがみられた。演出面では、出演者の成長描写や視覚的工夫(動く楽譜、アニメーション、色彩表現など)を通じて、児童の主体的な学びを促進していた。また『ゆかいなコンサート』では、1992年度の学習指導要領改訂を受け、自由な選曲や非西洋音楽の導入が進んだ点が特徴的であった。両番組とも、児童の発達段階に応じた演出がなされ、音楽教育の現場において重要な役割を果たしてきた。
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