【目的】インクルーシブ教育の進展に伴い、視覚障害者の職業としての理療に関する情報を得ないまま、就労に向けた進路選択を行う視覚障害者が出て来る可能性がある。適切な進路決定を促す ためには、選択肢の 1 つとして理療に関する情報を提供する必要がある。そこで情報の効果的な提供方法を検討する目的で、視覚特別支援学校高等部普通科生徒を対象に、理療に関する意識調査を実施した。
【方法】対象は、理療科または保健理療科を設置する全国の特別支援学校 58 校に在籍する、重複学級を除く高等部普通科生徒 363 名であった。手続きは、郵送による無記名自記式質問紙法とした。 調査項目は、基本属性 6 項目、理療についての情報の入手に関する内容 9 項目、合計 15 項目であった。
【結果】理療科・保健理療科への進学を希望する者は 35.4% で主な理由は理療への興味・関心、希望しない者は 64.6% で、主な理由は理療以外の就労及び大学進学であった。理療の仕事内容を知った方法の中で最も役に立ったのは、理療科教員の話、次いで在学生の話であった。また、今理療科・ 保健理療科の情報を得るために活用したい方法については、在学生の話、理療科教員の話の順に多かった。理療の仕事内容を「今も知らない」と回答した者の9割弱は理療を職業の選択肢とし て意識したことがなく、5 割が理療に関する情報は関心がないので必要ないと回答していた。
【考察】理療科・保健理療科への進学を希望していない者には、職業としての理療に関する十分な 情報提供がなされていない可能性が考えられた。そこで理療を自分の職業の選択肢の 1 つとして 考えられるよう情報提供を行う必要があり、具体的には、高等部入学後に、希望しない者も含めた生徒全員に対して、理療科教員による説明を中心とした内容で行うのが効果的であると考えら れた。
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