高齢透析患者が, 全身麻酔手術後に精神異常を併発した2症例を選び, 看護の方法を検討したので報告する. 高齢透析患者は, 透析による不安と高齢による意欲低下・適応能力低下で精神症状を呈しやすい. 症例1は, 胃全摘出術後であり, 術後7日目頃から腰痛を強く訴え, 不眠・不穏状態となったが, 鎮痛剤・鎮静剤の使用により不穏状態は徐々に消失した. 症例2は, 十二指腸潰瘍による出血性ショックで緊急入院した. 十二指腸部分切除・迷走神経切断術施行後より, 見当識障害がみられたが, 安静や食事の制限が解除されるに従って, 不穏状態は消失した.
患者の苦痛や不安は, 患者本人にしかわからない. そして, 患者の持つ経験の有無・希望・意思・環境などの心因的背景・年齢・性別などに修飾されて表現される. 患者が表すサインを見逃さないために, 看護婦は, 絶えず患者の言動に注意し, その意味するものが何であるかを考えることが必要である. 家族の協力や理解を得て, 少しでも苦痛・不安が軽減できるよう援助していけば, 早期社会復帰も可能である.
抄録全体を表示