【目的】
本研究は性別・年代別の身体組成及び血液成分の推移を把握し、その特徴について検討した。また、形態的な身体組成の評価から得たBMI及び体脂肪率(%FAT)、いわゆる2つの肥満指標と血液成分との関連から、形態的評価の有用性について検討した。
【方法】
対象は平成16年度の基本健康診断に参加した20歳以上の成人男女で、管轄保健所の協力を得た51,737名であった。身体組成はインピーダンス方式のTBF-101を用い、血液検査は空腹時の採血を用いた。分析にはSPSS11.0Jを用い、性別及び年代別に分類し、平均と標準偏差を算出した。身体組成と血液成分(TC、HDL、TG、LDL)については相関関係を求め、統計学的な有意水準はp<.05とした。
【結果】
男性のおける各項目の最高値は、身体組成ではBMIが30歳代(23.9±3.6)、%FATが30歳代(24.4±6.0%)で、血液ではTCが40歳代(209.2±36.1mg/dl)、HDLが80歳代(61.9±16.5mg/dl)、TGが40歳代(144.8±118.0mg/dl)、LDLが40歳代(122.6±32.8mg/dl)であった。一方、女性で最高値はBMIが70歳代(23.7±3.4)、%FATが60歳代(31.5±6.6%)で、血液ではTCが50歳代(216.5±33.1mg/dl)、HDLが50歳代(68.1±18.4mg/dl)、TGが80歳代(99.6±48.6mg/dl)、LDLが60歳代(131.3±29.9mg/dl)であった。
相関関係では男性のBMIと%FATとでr=.762から.901で、BMIに対してTCがr=.106から.260、HDLがr=-.285から-.406、TGがr=.179から.376、LDLがr=.197から.284であった(何れもp<.001)。また、%FATに対してTCがr=.167から.303、HDLがr=-.265から-.354、TGがr=.198から.375、LDLがr=.246から.321であった(何れもp<.001)。一方、女性ではBMIと%FATとでr=.861から.943で、BMIに対してTCがr=.050から.236、HDLがr=-.202から-.388、TGがr=.189から.335、LDLがr=.104から.354であった(何れもp<.001)。また、%FATに対してTCがr=.099から.250、HDLがr=-.187から-.399、TGがr=.214から.373、LDLがr=.142から.376であった(何れもp<.001)。
【考察】
本研究に用いられた血液成分は脂質との関連が高く、その量的条件は生活習慣病を引き起こす因子として注目されている。体格指数であるBMI及び体脂肪量を示す%FAT間では男女ともに高い相関関係を示し、BMIによる体脂肪の推定ができる。また、値の算出が簡便であることから健康管理や指導の現場では汎用されている。しかし2つの形態指標と血液成分との関連からは、何れの項目でも低い相関関係を示し、健康指導におけるBMI及び%FATのみの過大評価には注意が示唆された。
【まとめ】
肥満指数であるBMI及び%FATのみを用いた健康指導ではその有用性が問われ、生活習慣病などの指導において、血液検査との兼用が求められる。
抄録全体を表示