子宮は胎生期に傍
中腎管
の癒合によって形成され,
中腎管
は退縮するが,まれに遺残し,ときに過形成や中腎癌となる事も報告されている.今回,
中腎管過形成を伴った中腎
癌か否かで診断に難渋した一例を経験したので報告する.
症例は53 歳2 回経産婦.閉経周辺期の不正性器出血で当院紹介.子宮内膜が15 mmと肥厚し,内膜組織診結果より子宮体癌と診断され,造影MRI 検査より子宮体癌IA 期疑い+子宮頸部に限局する5 cm 大の子宮腺筋症の診断となった.頸部病変の評価目的に子宮頸部円錐切除術を施行.病理組織結果は,子宮頸部がびまん性
中腎管
過形成~
中腎
癌の可能性あり,頸管内~内膜掻爬が類内膜腺癌Grade 1 相当であった.子宮頸部腺癌(中腎癌)の可能性も含め広汎子宮全摘術+両側附属器切除術を施行.肉眼上,子宮峡部より隆起する黄白色表面不整の小指頭大ポリープ様病変を数個認めたが,子宮体部筋層には異常を認めず,子宮頸部も肉眼上は正常筋層に近い色調であった.HE 染色で5 cm 大の頸部の腫瘍病変を認めた.小型の硝子様内容を含む嚢胞の集簇像を呈し,全体としては異型に乏しい像であった.腺癌像は内腔に突出するポリープ部に限局し,最終診断は,子宮体癌:類内膜腺癌,Grade 1,pT1aN0M0 +びまん性
中腎管
過形成となった.子宮体がん治療ガイドラインでは再発低リスク群となり追加治療は要しない.一方,中腎癌であれば大きい頸部腫瘤は連続した病変の可能性もあり,子宮頸癌治療ガイドラインの再発中リスク群に属し追加治療の検討を要する.そのため日本婦人科腫瘍学会学術集会で検討した.免疫組織化学的にはポリープ様病変部はCK 陽性,CEA は一部のみ陽性,p53,Calretinin,CD10,ER は陰性であった.
中腎管
過形成部でも全てほぼ陰性であり,討論会で12 名の病理専門医の意見は分かれたが,結論は
中腎管
過形成様変化を伴った分類困難な子宮峡部腺癌との診断となった.追加化学療法を施行し術後3 年時点で再発なく経過順調である.
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