中野における物見遊山の魅力は、ひとことで言えば「混沌」である。その背景の1つは、物資の集積場として栄えた江戸時代から、鉄道開通による市街地の変遷、中央線沿線に共通する文化と新宿の文化が融合など、地理的要素が絡んでいると考えられる。もう1つは、その混沌が新たなシーズを生み出す「下地文化」になっている点である。その筆頭がサブカルチャーの象徴である
中野ブロードウェイ
だが、現在建物の老朽化が問題視されており、建て壊すとなれば中野のブランドであるサブカルチャーの存続が懸念される。
一方で、民間の力で立ち上げた観光協会が、中野区の経済界を巻き込みながら数多くのイベントを開催など、目覚ましい勢いで街の活性化を押し進めている。その機動力の根源には、20年前から蓄積された人のネットワークと、後進を育てる手腕にあることがヒアリングを通して明らかになった。
また、中野駅北口の西側にある警察学校跡地の再開発エリアには、オフィスビルや大学が整然と建ち並び、東側の込み入った路地と対極の構図を成している。こうした一見アンバランスに見える街並が、中野の物見遊山の資源になっているのだが、今後の開発の方向性を間違えると混沌という個性を損ないかねない。そのためには、観光協会を核とした民間の街づくり組織と行政の連携が不可欠である。
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