船舶の推進プラントとして, 中速高出力ディーゼル機関によるマルティプル・ギヤード・ディーゼルプラントが脚光を浴びてきた.このプラントの特徴を十分に発揮させるために, 機関と減速装置を結ぶ高性能, 高信頼性のかん脱継手が要求される.
われわれは大容量のかん脱形継手の開発を目的として, 高弾性ゴム継手を内蔵する空圧式二重円すい形摩擦クラッチをとりあげ, まず, 中形の試作品 (容量500ps) を試作し, 慣性形試験法により性能試験および耐久試験を行なった.その結果, クラッチがゴム継手と一体になっているため振動の吸収, すえ付け誤差の補償などが十分に満足されること, クラッチしゅう動面温度を理論的に求め実験値と対応させて, その妥当性を確認したこと, クラッチドラム面における熱クラックの発生限界を求めたこと, また, クラッチライニングどしてセミメタリック系がレジンモールド系よりも安定性の面においてすぐれていることなどの基礎資料を得ることができ, 大容量化への可能性をみいだした.
これに基づいて, 10, 000psのかん脱形継手を試作した.この継手を実機機関 (川崎-M・A・NV8V40/54ディーゼル機関, 8690ps, 400rpm) に結合し, 推進軸系に相当する負荷により陸上で試験を行なって, 実用化への確信を深めた.すなわち, 連続負荷運転に対しての十分な耐久性, クラッシュアスターン操作に対しての信頼性があると推定された.また, 遠隔自動操縦が容易にできること, エンジントルク変動を十分にしゃ断すること, そして製作費が安価であることが確認された.
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