Staphylococcus carnosusとStaphylococcus xylosusは,それぞれMRS液体培地中のメトミオグロビンを,パルマハム中に形成される赤色ミオグロビン誘導体(未同定)とニトロソミオグロビンに転換する.これらのStaphylococcus属細菌をスターターカルチャーとして,発色剤(亜硝酸ナトリウム)無添加のサラミ(約240g)を試作した.サラミは,一定の温度(20°C)と相対湿度(80%)に23日間保ち熟成させた.S. carnosusあるいはS. xylosusを接種したそれぞれの試料は,発色剤無添加でわずかの食塩を用いたのみにもかかわらず,塩漬したサラミとほぼ同等の赤色度を呈した.熟成過程中,経時的に測定した性状(pH値,残存亜硝酸根量,水分含量,水分活性,食塩濃度)は,塩漬した試料とほとんど同様の変化であった.細菌学的検査(一般生菌数,酸産生菌数,大腸菌群数,Staphylococcus属細菌数,サルモネラ菌数)を行った結果,試作した発色剤無添加サラミは,食品衛生上,良好な品質であった.また,発色剤を使用した場合においては,S. carnosusあるいはS. xylosusをスターターカルチャーとして接種することにより退色の抑制効果がみられた.
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