国内で栽培されたブドウを原料に生産される日本ワインの消費量が増加している.日本ワインは製品としての価値だけでなく,農地の再生やツーリズムなど多方面にわたる地域的影響が期待されている.本稿では国内でも有数の日本ワインの生産量を誇る長野県および塩尻市を事例に,ワインを活用した地域振興策とワインツーリズムの現況を報告する.長野県は2013年に信州ワインバレー構想を計画し,ワイナリーの増加やプロモーション活動に力をいれてきた.2023年にはそれを引き継ぐ信州ワインバレー構想2.0が策定され,ワインを活用した観光や地域づくりへの展開が期待されている.県全体での取組みが進む一方,伝統的産地である塩尻市でもワインを活用した地域振興が市町村合併を契機として行政を中心に推進されるようになった.現在は大規模なイベントの開催などワインツーリズムを推進する取組みが展開されており,第一次産業から第三次産業に渡る活用がなされている.
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