本研究の目的は,町村の「広域合併」により成立した都市の行政にみられる特性を,特に事業の展開に伴う公共投資の配分に着目して明らかにすることである.研究対象地域には,臨海工業地域の造成にあわせて,1960年代の2度にわたる合併の結果,旧郡全域が1市へと再編された千葉県
市原市
を選定した.
市原市
の行政は,当初,合併の目的とされた工業都市建設が都市経営の中心に据えられ,その投資配分は臨海部への「集中投資型」を示した.その後,地域間格差の是正政策とダム建設に代表される農村部での大規模プロジェクトによって,「分散投資型」の配分がもたらされた.さらに合併から約25年が経過すると,人口規模に見合う中心市街地の建設を目指した施策によって「拠点投資型」の投資配分を呈した.しかし,「対等型広域合併」の結果
市原市
は市域内に中心地間の競合関係や多様な地域属性を有することとなり,市行政は市域の機能的一体化という「統合」を意図する一方で,その施策には均衡発展の必要性などの「分散」の方向性も強く働いてきた.
市原市
の事例は,広域合併都市の地域経営の課題を示唆するものであり,これらは今後の市町村の領域設定を考える上で重要な視点であると考えられる.
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